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本番開始。
出演者席で、他の出演アーティストに囲まれながら司会や演奏しているアーティストを見ていた。
前から二列目に座る俺が視線をスッと下げると、目の前にはAヒョンのつむじ。
たまに振られるMCからの急な振りに日本語に慣れていない慌てる俺たちを、ヒョンは笑いながらフォローに入ってくれる。
やっぱりこのヒョンはすごく起点が効くし、とてもさりげない、地頭が良いんだろうな。
この会場にヒョンがいて良かった、メンバー全員がそう思ってるはず。
そのAヒョンを今、休憩中なのをいいことに隣のヨジャドルが話しかけている。
日本語勉強したての俺には全く聞き取れないしさっぱり内容がわからない。
でも、ヨジャドルがさっきから積極的に話しかけているし上目遣いやあざとい仕草を繰り出しているから日本語がわからない俺でもAヒョンにアピールしてるのはわかる。
火の無い所に煙は立たない。
army一番のヒョンは、誤った情報が拡散されないように相槌や軽い返事をしてarmyに配慮しているし、ヨジャドルがこれ以上自分の領域に踏み込まないようにしていた。
それも嫌味なくできるのがすごい。
休憩が終わってからもヨジャドルはコソコソとヒョンに話しかけるし、このヨジャドルはプロの意識が足りてないんじゃないか、グループのメンバーも止めないのか？なんて悪態が頭の中に次々流れる。
でもそれ以外に、彼女達のコンセプトである清楚な衣装、アイドルなだけあって容姿も整っているし華奢なヨジャがAヒョンの横に並ぶってだけで何故か少し負けた気になった。モヤモヤが晴れない。
「ヨンジュニヒョン、ちょっと表情硬いですよ」
スビニが小声で話しかけてきてはっとした。
ちょうど出演者席に向けられたカメラにモニターを確認すれば、確かにちょっと表情が硬くなっている。気をつけなければ、と思った矢先、目の前の頭がこっちを振り返った。
振り返ったヒョンは、俺と目を合わせてからニコッと笑って俺の膝をぽんぽんと叩いてまたすぐ前を向いた。
「〜〜〜〜〜っ」
俺は自分が思うよりも結構単純で、ヒョンの俺への対応や俺とヒョンの距離感をあのヨジャに見せつけた気がした。
今の一瞬でモヤモヤなんか一気に吹き飛んだし、横でニヤニヤする弟たちも小突かないでやろう。
そのやりとりはバッチリカメラに映ってたみたいで、会場に応援に来てくれていたarmyもmoaも黄色い悲鳴を上てたり、弟たちみたいにニヤニヤしてる人もいた。
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作者名：わいきき | 作成日時：2021年2月8日 13時
