兄貴分の僕、弟分長男の彼 (ページ30)

今日:4 hit、昨日:6 hit、合計:201,874 hit

28 ページ30

.

「Aヒョンは、ホソギヒョンには聞かないんですか？」

「ホソギヒョン、他の人達を教えるのに忙しそうだし、しかもダンスのことになると変なスイッチ入ってバッチバチに怖いでしょ？
愛のムチが強すぎて。それ以外は飴だから好きになっちゃうんだけど。

それにダンスのお手本がすぐ隣にいるし」

Aヒョンは視線の先のホソギヒョンにしごかれているナムジュンションを始めとする複数の先輩をみたあと、僕をみて笑った。

--

「A！同じとこまたミスしてる！
いい加減にしろよ」

「すみませんホソギヒョン、先輩方。もう一度お願いします！！」

アイドルにシフトしてからダンスレッスンはより厳しくなり、ダンスが苦手な先輩達は日に日に余裕がなくなっているのが目に見えてわかる。

事務所が急な方向転換をすると発表した。
ヒップホップ集団からアイドルグループへ。

それに反発したメンバーが次々に辞めていき30人もいた練習生は、あっという間にたった一桁になった。

活気が下がるレッスン室にいつも笑顔のAヒョンも寂しそうに渋い顔をしていた。

もしかして。
Aヒョンも脱退を考えているんじゃないか。

「俺、ヒップホップグループにスカウトされるなんてすごい光栄だし。自分の好きなことで戦えるのってすごいことだよね」

なんてこの前までキラキラした顔で話してたから。
事務所から方向転換を言い渡された時に聞こえた消えそうな「なんで…」の声はきっと聞き間違いじゃない。

母国を離れて、言葉の壁に苦戦しながら、それでも夢のために苦手なダンスも頑張ってきたヒョン。

だから、いつヒョンの口から「辞める」って言われてもおかしくなくて僕の不安はまたぶり返した。

PDに話があると言って会議室へ行ったAヒョンにユンギヒョンは「…あいつもか」なんて呟いたし、他の先輩も僕も、もうダメだと思った。

---

PDの部屋の前の通路でAヒョンが出てくるまでしゃがみ込んで待ってた。
何か話してる声は聞こえてくるけど、内容まではわからない。

ジワジワと目が熱くなるし、鼻がツンと痛い。

泣くな、泣くな。

急に俺がこんなところで泣いてたら、Aヒョンを困らせるし、めんどくさいって思われるかもしれない。

必死に耐えていたら、目の前のドアが空いて驚いている顔をしてるAヒョンと目があった。

「？」

ヒョンは驚いた顔をしながら、「とりあえず、いこっか」といって僕の手を取って歩き始めた。