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これは、僕がまだ練習生だった時のことなんだけど、人見知りが激しくて何をするにも勇気が必要だった。
自己紹介で足も声も震えるし、僕に向けられるいくつもの目にいつも逃げ腰。
何人かの先輩が声をかけてくれるけど、みんなヒップホップ上がりの人が多くて怖そうな人ばかり。
なかなかに拗らせている人見知りで、とうとう休憩中も1人になってしまった。
「ね、ジョングクくん。
一緒にお昼食べない?
お弁当のおかず、欲張って食べたいもの詰め込んだら量多くてさ。
あ、日本食大丈夫?」
外国人独特の訛りがありながらも僕に話しかけてきた人。確か1つ上のA先輩。
「えと、大丈夫…です」
俺がそういうと、よかった!と言って俺の隣に座り込んでお弁当の包みを広げたらお弁当2箱分にパンパンにおかずが詰められていて驚いた。
「あ、え?こんなに…?」
「ね、多いでしょ、改めて見て自分でも引いちゃった」
はい、と弁当箱の蓋を俺に差し出して「食べたいやつつまんでいってよ!」と言った。
「僕、弁当1個でもだいぶお腹いっぱいなのに、普通に考えてこんなに食べれるわけないんだよなぁ」
なんだか呑気な人だな、なんて思いながらそろそろと卵焼きをいただいた。
「わ、美味しい……」
「そうでしょ、今日の卵焼きは自信作なんだよね」
「これ、先輩が作ったんですか?」
「うん、3ヶ月前は食べれたもんじゃなかったけど、自分で言うのもあれだけど最近本当に料理が上達してさ。
そしたら作るのが楽しくて。」
久しぶりの日本食は本当に美味しくて、多分それは先輩から発せられる謎の安心感と誰かと一緒に食べる効果なのかな
お店の味とは違う、なんだか別の、温かみを感じた。
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あの日からAヒョンにくっついて行動することも多くなったし練習に参加するのも慣れてきた。
他の先輩達もAヒョンを通して話せるようになってきたし、Aヒョンは僕と外の世界をつなげる橋だった。
それでも課題はある。
僕は元々ダンスが得意だし歌も好きだったけどレッスンとなればそれは別でみんなの前で発表する時は羞恥心が捨て切れずいつも泣いている。
そんな僕にAヒョンは
「俺はここにきてからダンスを始めたから、ジョングクはダンス得意そうだし、個人練習付き合ってくれない?」
僕が見本を見せたり、指摘をするたびに「さすが」「やっぱりグガに見てもらうと上達が早い気がする」なんて褒めてくれて僕に自信をつけさせてくれた。
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作者名:わいきき | 作成日時:2021年2月8日 13時