兄貴分の僕、弟分長男の彼 (ページ12)

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最高の曲、

スタジオでダンスしながら歌う俺たち。

目の前にいる憧れの先輩、Aさんは

「………………………う～～～～ん…」

眉間にこれでもかとシワを寄せて渋い顔をしながらトレーナーの横で俺たちを見ていた。

「改めて観て、どう？芸名くん」

「う～～～ん…なんていうか、微妙………
期待していたものと違うというか……」

あの曲をもらったから2ヶ月、俺たちは浮かれもそこそこにしっかりとスイッチを切り替えて練習してきた。

ボイトレからダンスから抜かりなく。

だから、今日午前の仕事の後に見学しに来ると言ったAさんにいいところを見せられると全員意気込んで気合も十分だった。

はずなのに。

「歌はうまい。ダンスもうまい。

でも二つを一気にやると、なんか、噛み合ってない気がするんですよね…」

あ、もちろん振りが悪いわけじゃなくて単純に合わせると下手くそに見えるというか…
と続けた

「今のはダンスは完璧だったように思うけど…」

というトレーナーに

「今のはダンスは完璧でした。ダンスは。
歌と表情があんまりって感じで…」

とやっぱり渋い顔をしているAさん

気合を入れて挑んだ分、想像と違う反応に俺たち5人はすでにメンタルをボコボコにされているし、あの穏やかなAさんが結構辛辣なこもをズバズバいうのも意外すぎてショックの上乗せ。

でもあのJHOPE先輩も、あんなにニコニコしてるのにカメラなしのダンスレッスンの時は鬼になるって聞くし、やっぱりどんなアイドルにも見せられる面とそうじゃない面があるんだな、なんて

「なんていうか、全然キラキラしてなくて。
俺はこの曲を作った時に、輝いてる5人を想像して作ったのに2ヶ月たって蓋を開けてみたら芋っぽいんだよね、表情もパートによってはおざなりになってるし」

「すみません…」

言葉がこぼれた。

目に見えて周りのメンバーが落ち込んでいる。
あのポーカーフェイスなテヒョナですら。

「あ、謝って欲しいんじゃなくて。

ごめんね、僕も一方的に言ってるけどみんなにはこれから経験して理解することもあると思うから。
でも、流石にMV撮影日も決まってるし、正直ちょっと焦ってる。

僕が見に来れるのってもう今日くらいだし、なんとかもっと良くなるように持っていきたいなって」

そして、Aさんと俺たちの5時間にも及ぶ地獄の練習が開始された。