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昨日の雨が嘘のように晴れた空だった。
昨日のことが全部夢だったのかと錯覚してしまいそうな程に晴れ渡っていた。
いや、もしかすると今が夢なのかもしれない。
何か都合の良い夢を見てしまう前に、目を覚まさなければ。
ぽちゃん、と水の跳ねる音がした。
足先がひんやりした気がして、下を見る。
そこにある水たまりを踏んでいたらしい。
ゆっくりと靴が湿っていくのがわかって慌てて水たまりから足を引っ込めた。
じわり、じわり。
ああ、夢じゃない。
上靴に履き替える。
廊下は賑わっていた。
活気に満ち溢れた学校だった。
色にあふれている。
階段を上る。
途中で去年同じクラスだった女の子とばったり会った。
「おはよう」
笑いかけてくれた。
それは確実に私に向けられた挨拶だった。
「おはよう」
「昨日雨すごかったねー」
「ねー」
「またねー」
「うん、また」
他愛もない短い会話を終え、手を振る。
相手も振り返してくれた。
また階段を上る。
目的の階に着くと、廊下はガヤガヤと賑わっていた。
楽しそうに話している人、急いでいる人、眠そうな人、友達に会いに他クラスへと向かっている人。
ふと、目の前から見覚えのある人が歩いてきているのが視界に入った。
あ、と小さな声が漏れた。
思わず足を止めてしまいそうになった。
目の前を歩いている人も、一瞬足取りを緩める。
重岡だ。
気づいた瞬間、下を向いた。
どんな顔をすればいいのかわからなかった。
夢じゃなかったと確信してしまったせいか、余計にわからない。
気づかなかったふりをして、通り過ぎてしまおうか。
そんな卑怯なことを考えているときだった。
「おはよう」
顔を上げる。
重岡が私をまっすぐに見ている気がした。
足を止めた。
音が消えた。
賑わっているはずの廊下が、やけに静かに聞こえた。
時計の針が止まった。
勘違いなどではない。きっと、止まっている。
「おはよう」
また、重岡の声。
次は笑った。
誰よりも人懐っこい笑顔で。
私に向けられた言葉だと思ってもいいのだろうか。
私だけに向けられた言葉だと、思ってもいいのだろうか。
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プシュケ(プロフ) - しょあさん» ありがとうございます(;_;)大好きだと言ってもらえると私なんてまだまだちっぽけなのにとても誇らしい気持ちになれます。魔法のような言葉だなあと常々思います。更新頑張りますね! (2018年6月30日 21時) (レス) id: c500b02c4b (このIDを非表示/違反報告)
しょあ(プロフ) - だいすきなお話です!更新楽しみにしてます(ノ_<) (2018年6月25日 1時) (レス) id: a32bcb43cc (このIDを非表示/違反報告)
プシュケ(プロフ) - れんれんLOVEさん» ありがとうございます(;_;)そう言って頂けて有り難いです。2人の恋がゆっくり動き出すところを見守っていただけたら幸いです、更新頑張ります! (2018年4月15日 23時) (レス) id: 0d3b4e228a (このIDを非表示/違反報告)
れんれんLOVE - お互いまだ好きなのにその恋を諦めようとしてる。そんな感じでとても切ない気持ちになりました。これからも頑張ってください! (2018年4月15日 16時) (レス) id: d3a8aaae25 (このIDを非表示/違反報告)
プシュケ(プロフ) - 永瀬のあ。さん» ありがとうございます(;_;)弟子ができましたも読んでいただけてるんですね、嬉しいです、ありがとうございます。さっさと言えよ!って感じですよね、私もそう思います。笑 少しずつ成長していく姿を見守っていただけたらと思います、更新頑張ります! (2018年4月8日 22時) (レス) id: 0d3b4e228a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:プシュケ | 作成日時:2018年4月7日 18時