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sigeoka side







「ただいまっ」



玄関に靴を脱ぎ捨てる。

揃えてなんていられなかった。



「おかえり、アイスあるよ」

「あとでっ!」



姉の言葉を右から左へと受け流す。

姉には申し訳ないが、今はそれどころではない。


軽快なリズムで階段を駆け上る。

二階の一番奥の部屋。

そこが俺の部屋だ。

ガチャンと扉を開けて中に入る。

閉めた扉にぴたっと背中を合わせた。

一つ、大きな深呼吸。

何かが込み上げてくる。

その感情のままに、ベッドに飛び込んだ。



「......あー、あー!!」



枕に顔を埋めて、大きな声を出した。

足をジタバタとさせると下にいる姉に怒られてしまった。


行き場のなくなったこの感情をどうしようか。

嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて。


嫌われてなかった。

好かれてたわけじゃなかった。

けれど、嫌われてなかった。

それが、たまらなく嬉しい。


自分が渡したキーホルダーを今でも大切に持ってくれていた。

驚いた。

もう捨てただろうと思っていた。



「..やっばいだろ...ほんま、やっばい」



顔があつい。

時期的にはまだ早いが扇風機のスイッチを足で押す。

涼しいはずなのに、全然涼しくならない。

顔が緩んだまま、元に戻らない。



「ほんっま、...小悪魔やろ」



あんなの、ずるい。

真っ赤な耳して、はにかみながら、手を振ってきて。


深い意味はないとわかっている。

耳が赤くなってしまうのは、綾瀬の癖だ。

綾瀬自身が、嫌だと思っている癖。

だから、あまりそこに深く突っ込んではいけない。

耳が赤くなるのに理由もないし、意図もない。


だからこそ、小悪魔なのだ。

だからこそ、ずるいのだ。

馬鹿だから、単純だから、期待してしまいそうになる。



今は、嫌われてないとわかっただけでも十分だ。

好かれてなかったとしても、嫌われてはない。

それだけでも、俺の中では大きな一歩。


自分の感情を出すことが苦手な綾瀬がまっすぐに俺にぶつかってきてくれた。

自分の気持ちを、自分の言葉で伝えたいと思ってくれた。



「...ふー」



明日から、また綾瀬におはようって笑いかけてもいいだろうか。



「だいきー、アイス食べよーよ」

「今行くー」



声が弾んでしまった。

それは、きっと目先にあるアイスに心を弾ませているからだ。









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プシュケ(プロフ) - しょあさん» ありがとうございます(;_;)大好きだと言ってもらえると私なんてまだまだちっぽけなのにとても誇らしい気持ちになれます。魔法のような言葉だなあと常々思います。更新頑張りますね! (2018年6月30日 21時) (レス) id: c500b02c4b (このIDを非表示/違反報告)
しょあ(プロフ) - だいすきなお話です!更新楽しみにしてます(ノ_<) (2018年6月25日 1時) (レス) id: a32bcb43cc (このIDを非表示/違反報告)
プシュケ(プロフ) - れんれんLOVEさん» ありがとうございます(;_;)そう言って頂けて有り難いです。2人の恋がゆっくり動き出すところを見守っていただけたら幸いです、更新頑張ります! (2018年4月15日 23時) (レス) id: 0d3b4e228a (このIDを非表示/違反報告)
れんれんLOVE - お互いまだ好きなのにその恋を諦めようとしてる。そんな感じでとても切ない気持ちになりました。これからも頑張ってください! (2018年4月15日 16時) (レス) id: d3a8aaae25 (このIDを非表示/違反報告)
プシュケ(プロフ) - 永瀬のあ。さん» ありがとうございます(;_;)弟子ができましたも読んでいただけてるんですね、嬉しいです、ありがとうございます。さっさと言えよ!って感じですよね、私もそう思います。笑 少しずつ成長していく姿を見守っていただけたらと思います、更新頑張ります! (2018年4月8日 22時) (レス) id: 0d3b4e228a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:プシュケ | 作成日時:2018年4月7日 18時

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