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もし、人生で一度だけ時間を巻き戻すことができる魔法を使えたら

私は迷うことなく、今使っていただろう。

脳内で後悔先に立たずと書かれた看板を持った私が、薄ら笑っている。


先生の授業が、何一つ頭に入ってこなかった。

元々説明が上手ではない先生で、理解するのに時間がかかるのは今に始まったことではないけれど。

しかも不得意なコミュニケーション英語担当のせいで、余計にわかりにくい。

しかし、今日は聞く気にすらなれなかった。

窓の外を見れば鬱屈な私と同じ色をした空が、空気をどんよりとさせていた。



「帰ろー。」



結沙が私を呼ぶ。

私は一つ頷いて、カバンに教科書を詰めていった。


騒がしかった教室が、少しずつ落ち着きを取り戻していく。

比例するかのようにグラウンドから活気のある声が、風に乗って教室まで届いてきた。

締まりのない顔をした私に、「ばいばい」と舞花ちゃんが手を振ってくれたから、慌てて振り返した。

脱力していた表情筋に、思い切り力を込めて笑顔を作る。

舞花ちゃんの弾けた笑顔が、今の私には眩しい。



「お待たせ。」

「ううん、全然。じゃ、帰ろ。」



じめじめした空気のせいで廊下が滑りやすい。

梅雨の間は「滑りやすくなっているので注意」と書かれた紙が掲示板に貼られている。

けれど廊下をスケートのように滑って楽しんでいる男子たちを見れば、その張り紙に絶対的な力があるのかどうか、一目瞭然だ。

鬱陶しい、とも思うけれどそのおかげで梅雨が来た、と思うのもまた事実。



「男子たちが輝く季節になったね。」

「もうすぐ夏だね。」

「それは言わないで。」



結沙の長い髪が一つに束ねられたら、夏になった合図だ。

その日が出来るだけ来なければいいな、と願ってしまうのはきっと仕方のないことなんだと思う。



「でももう6月に入ったもんね。」

「あれ、今日何日だっけ。」

「えーっと、ちょっと待ってね。」



不意に日付を聞かれてわからなくなる。

確認するためにスマホを取り出そうと、ポケットに手を入れる。

なんとか生き返らせた表情筋が、また凍りついていくのが自分でもわかった。

私の思い違いであってほしい。

ドクン、と嫌な音を立てる心臓に気づかないふりをしながらスマホを取り出す。


私は歩みを止めた。

冷たい汗が流れるのは、じめじめした暑さだけのせいではない。


さっきまでスマホに付いていたはずのキーホルダーが、無くなっていた。









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プシュケ(プロフ) - しょあさん» ありがとうございます(;_;)大好きだと言ってもらえると私なんてまだまだちっぽけなのにとても誇らしい気持ちになれます。魔法のような言葉だなあと常々思います。更新頑張りますね! (2018年6月30日 21時) (レス) id: c500b02c4b (このIDを非表示/違反報告)
しょあ(プロフ) - だいすきなお話です!更新楽しみにしてます(ノ_<) (2018年6月25日 1時) (レス) id: a32bcb43cc (このIDを非表示/違反報告)
プシュケ(プロフ) - れんれんLOVEさん» ありがとうございます(;_;)そう言って頂けて有り難いです。2人の恋がゆっくり動き出すところを見守っていただけたら幸いです、更新頑張ります! (2018年4月15日 23時) (レス) id: 0d3b4e228a (このIDを非表示/違反報告)
れんれんLOVE - お互いまだ好きなのにその恋を諦めようとしてる。そんな感じでとても切ない気持ちになりました。これからも頑張ってください! (2018年4月15日 16時) (レス) id: d3a8aaae25 (このIDを非表示/違反報告)
プシュケ(プロフ) - 永瀬のあ。さん» ありがとうございます(;_;)弟子ができましたも読んでいただけてるんですね、嬉しいです、ありがとうございます。さっさと言えよ!って感じですよね、私もそう思います。笑 少しずつ成長していく姿を見守っていただけたらと思います、更新頑張ります! (2018年4月8日 22時) (レス) id: 0d3b4e228a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:プシュケ | 作成日時:2018年4月7日 18時

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