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「同点だね。」
「ね。」
8-8のまま試合が進んでいく。
少しずつみんなに疲れが見え始めてきた。
でもまだあと少し時間が残っている。
ボールが、あっちへ行ったりこっちへ行ったり。
ゴールに投げられて、外れて、またボールがダンダン、と音を立てる。
「見てるの楽しいけど体育座りきついわ。」
結沙は立ち上がって思いっきり伸びをしてる。
バキバキ、と関節がなる音がして2人で笑った。
私は座ったまま少し腰を伸ばした。
「..ん?」
爪先に何かが当たった。
ぽん、と当たって、止まった。
コロコロ転がってきたのはボール。
「ボールだ。」
「うん。」
「渡しに行ったほうがいいんじゃないの?」
「そうだよね。」
コロコロ転がってきたボールを持ち上げ、立ち上がる。
コートに投げればいいのかな。
それとも先生に渡せばいいのかな。
悩んでいたら誰かが走ってきた。
「ごめん、それ投げて。」
心臓が、うるさい。
ドキドキバクバクうるさい。
汗をかいた重岡が私に向かって両手を広げてる。
まっすぐに見てくるから、私は目を合わせることができない。
どうしよう。
いや、どうしようじゃない。
とりあえず投げないと。
えいっ。
パッと手を離して投げたボールは何回か力なく跳ねて、コロコロと重岡の元へ転がった。
さっきの私と同じように、重岡の爪先でボールが止まる。
なんだか、思い描いてたのと違う。
普通にパスがしたかったのに、思ってたより力がこもっていなかった。
「...くく、」
重岡は、腕で口を隠して必死に笑いをこらえてる。
「パスは胸の前で投げんねん、」
しゃがんでボールを拾った重岡は私に向かってボールを投げた。
私の元にボールがやってくる。
重岡が両手を広げた。
“言った通りに投げてみ?”
胸の前でボールを持って重岡の元に届くよう、投げた。
重岡までの距離には少し届かなくて、手前で落ちそうになった。
だけど重岡が少し前に出て、ボールを取ってくれた。
「ナイスパスっ!」
歯を見せながら、笑窪を見せながら、笑った。
くるり、と私に背を向けコートに走って戻っていく。
コートに向かう重岡の背中がやけに大きく見えた。
ボール、重岡の距離まで届かなかったのに
わざわざ前に出て取ってくれた。
私はゆっくり目を閉じた。
男子の声が聞こえる。
その中でも重岡の声が一番大きかった。
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プシュケ(プロフ) - しょあさん» ありがとうございます(;_;)大好きだと言ってもらえると私なんてまだまだちっぽけなのにとても誇らしい気持ちになれます。魔法のような言葉だなあと常々思います。更新頑張りますね! (2018年6月30日 21時) (レス) id: c500b02c4b (このIDを非表示/違反報告)
しょあ(プロフ) - だいすきなお話です!更新楽しみにしてます(ノ_<) (2018年6月25日 1時) (レス) id: a32bcb43cc (このIDを非表示/違反報告)
プシュケ(プロフ) - れんれんLOVEさん» ありがとうございます(;_;)そう言って頂けて有り難いです。2人の恋がゆっくり動き出すところを見守っていただけたら幸いです、更新頑張ります! (2018年4月15日 23時) (レス) id: 0d3b4e228a (このIDを非表示/違反報告)
れんれんLOVE - お互いまだ好きなのにその恋を諦めようとしてる。そんな感じでとても切ない気持ちになりました。これからも頑張ってください! (2018年4月15日 16時) (レス) id: d3a8aaae25 (このIDを非表示/違反報告)
プシュケ(プロフ) - 永瀬のあ。さん» ありがとうございます(;_;)弟子ができましたも読んでいただけてるんですね、嬉しいです、ありがとうございます。さっさと言えよ!って感じですよね、私もそう思います。笑 少しずつ成長していく姿を見守っていただけたらと思います、更新頑張ります! (2018年4月8日 22時) (レス) id: 0d3b4e228a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:プシュケ | 作成日時:2018年4月7日 18時