08.新手のナンパ ページ8
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無事に会計を終えてコンビニを出ると、少し風が強くなっていて
急いで会社に戻ろう…って足を速めたときだった。
「すみません！」
後ろから声をかけられて、パッと振り返った。
そこには、深く帽子をかぶってマスクをしたカゴさんの姿。
「あの、さっきはすみませんでした…」
「あ、お気になさらないでください･･･(笑)」
大きなコンビニ袋をガサガサ揺らしながら、こっちに小走りでカゴさんがかけて来て
怪しいと思ってしまったのは、顔から得られる情報が少なかったからかな。
「あの、お金必ず返すので連絡先とか…」
新手のナンパ？なんて思って
こんな怪しい人に、連絡先教えるバカ何処にいるの…って思った私は
「い、いいですいいですっ！」
って必死に拒否した。
「いやでも！千円も借りちゃって･･･」
「本当にいいですから！それに私東京の人でこの辺の人じゃないので…」
返してもらう機会なんてない。そう言おうとした時だった。
「え！俺も！･･･俺も東京です！」
あぁ…私、地雷を踏んだ。
「出張か何かですか？」
「まぁ、はい…」
「お、俺も出張みたいなもんで！」
ぺらぺらと話始めるカゴさんに苦笑いをすると
あ、すみません。って何故かカゴさんも苦笑いしたみたいだった。
･･･笑うと目尻がくしゃっとする人なんだ。
「じゃあ、わたしそろそろ…」
「あ、待って！」
「上司が待ってるので」
「じ、じゃあ会社名だけでも！」
なんて言うから、もう面倒くさくなって
財布の中に入れていた予備の名刺を出してカゴさんに渡した。
「これでいいですか？」
「え、あ･･･ありがとうございます！」
「･･････」
「･･･え？あ！」
思い出したかのように、私を見つめた。
「すみませ、俺名刺持ってなくて」
「え？」
「紙とペンってありますか･･･」
帽子の上から頭をかいて私にそう言うから
紙はレシート、ペンは偶々、社員証にぶら下げていたボールペンを出して手渡した。
手はかじかんで、寒い。
カゴさんはサッと紙に何かをかくと、それを渡して来た。
そこには、11桁の番号とメールアドレスらしきものが書いてあって
「じ、じゃあ俺これで。それ登録しておいてください！」
っていうとコンビニ袋を揺らしながら吹雪始めた銀の世界に消えていった。
アドレスには、カゴさん、なんて文字は勿論なく
masakiって文字を見つけて「まさき…」って思わず口ずさんだ。
これが、私と雅紀くんの出会い。
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作者名：にゃん | 作成日時：2017年11月29日 0時
