No.3 可能性 ページ6
side勇利
「おかえり」
ヴィっちゃんの遺影に手を合わせていると、頭上で聞き覚えのある声がした。
「真利姉ちゃん………」
「スケート、辞めちゃうの？」
「まだ決めてない、かな」
「応援するよ、続けるなら」
「あ、うん……ありがとう」
姉ちゃんは優しい。
昔からその素っ気ない優しさに助けられてきた。
そして今も、こうして支えられている。
僕は1人でスケートをしているけど、もしかするとひとりじゃないかもしれない。
長谷津に戻って、なんだかそんなような気がした。
「ていうか勇利、太った？(笑)」
「えへへへ…」
その点については否定しません…。
さっきミナコ先生にも突っ込まれたのに……。
傷を抉らないで、姉ちゃん………。
思わず苦笑が溢れた。
「勇利〜ご飯だよ〜〜」
また頭の上で声がした。
Aだ。
久しぶりのカツ丼だなぁ。
楽しみ！
そんなことを考えながら振り返ると、すらりと美しく立つAが目に映った。
「えっ、な、何で立って……え？」
怪我して歩けないから車椅子乗ってたんじゃなかったの？？
え？？？
僕の心情を察したのか、Aはくすりと笑って説明してくれた。
「あ、車椅子？うん、確かに必要だよ？でも流石に旅館の中では使うわけにいかないじゃん。俺、リハビリ頑張ったんだよね〜。だから立って歩くくらいは出来るの！」
そう自慢げに鼻の下を擦るAの姿は、怪我をした直後の抜け殻の様な状態から、息を吹き返した様だった。
_______ちょっとは、踏ん切りついたのかな
スケートを失った直後のAは、その言葉通り、もぬけの殻だった。
きっと、自 殺することまで考えていたんじゃないかな。
見ていることすら辛いその姿に、今では少しばかりの懐かしささえ感じるから不思議だ。
僕は、あんな状態のAを、少しでも励ましてあげることができただろうか。
僕のスケートは、彼の中の何かを動かせただろうか。
スケートはひとりでする競技だ。
けど、僕らはいつも2人でスケートをしていたと思う。
それは、今になっても変わらない。
まだ、Aとスケートをしていたい。
沢山の感情が溢れ出して止まらない。
僕はその中から、一つの可能性を見つけた気がした。
_________そうだ、それがいい、きっと
そして僕は、ジャージに身を包み、駆け出した。
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駄人間K(プロフ) - ☆Rin☆さん» ありがとうございます！更新頑張ります！！ (2017年1月6日 21時) (
レス) id: c389418083 (このIDを非表示/違反報告)
☆Rin☆(プロフ) - この作品のおかげでユーリ沼にはまりそうで怖いです（笑）更新ヾ(〃＾∇＾)ｏ ﾌｧｲﾄｫｰ!!楽しみにしてます♪ (2017年1月6日 21時) (レス) id: f2c4ea5338 (このIDを非表示/違反報告)
夏生まれ - 楽しみにしています！！ (2017年1月5日 19時) (レス) id: 80ea5835ea (このIDを非表示/違反報告)
駄人間K(プロフ) - 夏生まれさん» ありがとうございます！！ハピエン、最後にはみんな笑えるよう、これからも更新頑張っていきます！これからもよろしくお願いします！！！ (2017年1月5日 8時) (レス) id: c389418083 (このIDを非表示/違反報告)
夏生まれ - このお話好き！！ちょっと、切ないのがたまらない…けどハピエン期待してます！！ (2017年1月4日 22時) (レス) id: 80ea5835ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：駄人間K | 作成日時：2016年12月1日 10時
