No.0 分岐点 ページ1
『僕、フィギュアスケート始めるんだ!』
いつか、満面の笑みで勇利は言った。
『そっかぁ、じゃあ勝負な!スピードスケートの俺と、フィギュアスケートの勇利、どっちが先に世界で戦えるか!』
その時、Aもまた勇利と同じように、そう答えた。
2人は、スケートに惹き込まれる。
『ちぇ、同時デビューかぁ。勝負は引き分けだな』
2人は16歳で晴れて世界デビューを果たす。
その時の会見でAは勇利にまたも笑顔を向けた。
『じゃあ、今度はどっちが先に世界一になれるか、勝負しようよ!』
そして今度は勇利が勝負を持ち出した。
Aは笑顔で頷いた。
観客席から、短く悲鳴が上がる。
直後、中継カメラは日本の選手の姿を映し出した。
−−−大丈夫でしょうか東野選手
放送席でしきりに繰り返される台詞。
宿泊先のホテルで勇利は思わず、拳を握り締めた。
−−−アメリカ選手の方も心配ですねぇ
スピードスケートワールドカップで事故が起こった。
Aランクのレース前の公式練習での事だ。
アメリカの男子選手がバックストレートの出口で転倒し、外のコースを滑走していたAを巻き込み、そのままマットへと突っ込んだ。
ただ突っ込んだだけなら良かったが、脊椎と後頭部をもろに打ち付けているようで、軽く脳震盪を起こし動けなくなっている。
さらに、Aが転倒して滑ってきたところには、血で真っ赤な道が出来上がっていた。
アメリカの男子選手のエッジが当たり、左脚に怪我をしたようだった。
シーズンが始まってまだ間もない、11月中旬の日本で行われた大会の日の事だった。
Aは、朦朧とする意識の中、担架に揺られながらぼんやりと1年と数ヶ月前の勇利との会話を思い出していた。
___________勝負…
sideA
目を覚ますと、白い天井が眩しかった。
医務室に寝かされていた。
手足が若干痺れているが、他に痛みはない。
眠っていたのは然程長い時間ではなかったようだった。
隣から、切羽詰まったコーチの声が聞こえた。
何があった?
必死に考えようとする。
しかし、思考がうまくまとまらない。
コーチがなんと言っているのかも、理解できなかった。
頭の芯がじくじくと痛む。
ただ漠然と混乱していた。
__________出来なくなるのかな、スケート
不安が心を掻き乱す。
それからしばらくして、救急車が到着した。
何が何だかわからないまま処置を受け、病院に着いた所から記憶がない。
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駄人間K(プロフ) - ☆Rin☆さん» ありがとうございます!更新頑張ります!! (2017年1月6日 21時) (レス) id: c389418083 (このIDを非表示/違反報告)
☆Rin☆(プロフ) - この作品のおかげでユーリ沼にはまりそうで怖いです(笑)更新ヾ(〃^∇^)o ファイトォー!!楽しみにしてます♪ (2017年1月6日 21時) (レス) id: f2c4ea5338 (このIDを非表示/違反報告)
夏生まれ - 楽しみにしています!! (2017年1月5日 19時) (レス) id: 80ea5835ea (このIDを非表示/違反報告)
駄人間K(プロフ) - 夏生まれさん» ありがとうございます!!ハピエン、最後にはみんな笑えるよう、これからも更新頑張っていきます!これからもよろしくお願いします!!! (2017年1月5日 8時) (レス) id: c389418083 (このIDを非表示/違反報告)
夏生まれ - このお話好き!!ちょっと、切ないのがたまらない…けどハピエン期待してます!! (2017年1月4日 22時) (レス) id: 80ea5835ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:駄人間K | 作成日時:2016年12月1日 10時