冬物語 6

世田谷ラブストーリー☆登坂 ページ44

*









またやってしまった
今日で何回目だろう








片思いしている彼女を
今日もまた
いい人を演じて
終電に間に合うように
駅まで送り届けてしまった








登坂「・・・また明日」ニッコリ








「うん、また明日」ニッコリ









改札口でAと別れた後
一人でまた自己嫌悪








なかなか
友達以上になれない俺たちは
仕事帰りに酒を飲む
ダダの飲み仲間だ








それには俺にも原因がある
前の彼女を引きずっていた俺は
あと一歩が
あと一押しが
怖くてできないでいた






俺の気持ちは
普通の人なら絶対といっていいほど
態度に出ているはずだから
誰でも気づくはずだ









きっとAだって
なんとなくは気づいてそうなのに







友達以上の関係には
上がりそうにない









.









仕事帰り
今日こそはと彼女の帰りを
行きつけの
居酒屋で待っていた









いつも俺が此処に居ると
思っているのか
それともただここが好きだから
飲みにきているのか
それはよくわからなかった









店のドアが開き
店員の声が響く








足音が近づき
肩に置かれる掌の感触に
Aだとすぐわかった









「お疲れさま」









登坂「お疲れ」笑









自然な笑顔で彼女を迎え
自然に隣に腰を下ろす彼女








「とりあえず生かな」笑






登坂「今日も一人かよ」笑






「そっちだって」笑






登坂「だって俺フラれたばっかだし」笑








冗談ぽく言ったつもりだった
ただ軽く流してほしかったから









「は、初耳・・」






登坂「そうだっけ？」笑






そっと流してくれると
思っていたに大間違い









次から次へと質問攻めだ







いつ何処で
どんな風に別れたのか
そんなこと聞かないでくれ






そう思いながらも終始
終わることはなかった









.

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