桜桃フレーバー《桃》

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「あー、頭痛…」


欠席はなるべくしないように、
なんとなく俺の中のモットーで。

久しぶりに風邪ひいたけど、
なんとかなるやろ精神やった。


「はは、笑えへん」

38度9ってこれただの熱やないやん


体温計を元の棚の場所に置こうと立ち上がれば、フラフラする体。



「あーしんど、」


置いて、座り込めばポケットから鳴る携帯電話。



「…はい」
〈望生きてる？〉


相手は安定の流星で、どうやら神ちゃんも一緒らしい。


「死んでる。」
〈はは、よかったジョーダン言えてるわ〉
〈はははっ〉


神ちゃんの笑い声と、また別の笑い声も聞こえた。
また、独特な。



「39度近くあるん初やねんけど」
〈まじで、高！〉
〈ほんなら、お見舞い行くわ〉



「え、まじ？」
〈おん、テキトーにもう買い物はしてん〉

持つべきものは友達やって、こういう時身に染みる。

〈ほんじゃ、待っててな〉
「おん」
〈くれぐれも手は出すなよ〜〉
「…は？」



最後意味分からん流星の言葉で切られた電話。


「なんで男に手出すねん」


まぁ確かに、
最近彼女とは上手く行ってないし、
触れたいとか思ってないこともないけど。

「きっしょ、俺」




ベッドに横になり、おでこに腕をくっつける。


「熱…もう死ぬやん俺」



ゆっくりと瞼を閉じて、寝る体勢に入りかけた。

ーピーンポーンー




「…流星はっや。」



3分もまだ経ってへんで。
なんや、スーパーマンかよ。



「流星、神ちゃん近くおった…」


ドアを開けて、2人が立ってるところを想像してた。
てか、話の流れ的にはそういうこと。




「あの、藤井くんと神山くんにお見舞い頼まれてっ
勝手に来て、ごめんなさいっ！」





ペコッと頭を下げてたのは、
正直、来るはずのない、

大好きなアイツ。








「こ、これっ渡したら帰ろうと思ってたから！
2人が買ってくれたみたいで、
私は、これしか買ってないんだけど…」



ガサガサと取り出したコンビニの袋。
2人が買ってくれた物は俺の好きなゼリーとプリンと冷えピタやけど、
Aの方の袋には栄養ドリンクとか薬とか、飲み物の重たいはずの瓶が入ってる。




「あ、ごめん。重たいよね、あ、でも勝手に入るのも…」



キョロキョロして、また自分がこんな重いのばかり買ってきてしまったからって反省してる、
もう見てるだけで伝わってきた。




「…今日1人やから。」

「え…？」



ドアをさっきより大きく開けて、
彼女の腕を引いた。

「一緒にいたい。」

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