桜桃フレーバー《桃》

オミマイ 1 ページ39

「Aおっはよー」

「おはよー…」

教室に入ってきたマキちゃんに頭突かれる。

「いや、起きてないし」

机に伏せた頭。
ここ2週間くらい朝はこれ。


「もう喧嘩の理由はって聞いてるのに言わないし」
「だって喧嘩もしてないんだもん…」



むしろ、何かあったほうがよかった。
望くんと付き合って良い感じに2ヶ月過ぎると思ってたのに。

「倦怠期じゃないの倦怠期」
「いや早いでしょそれは」
「ケンタッキー食べたなってきた」
「あんた入るとややこしいのよ」

倦怠期が2ヶ月で来るとか聞いた事ないよ。
それは使い方間違ってる。

理系のクラスはリア充少ないで有名。
女子は私とさっちゃんの2人。
男の子なんか照史くんだけ。
どうかしてる…

「心の声聞こえましたけど？！」
「はっ…ごめん、」

慌てて口を閉じる。
照史くんは「ほんまに言ってたん？！」
ってしょげてるけど。

…どうしたらいいんだろう。

「よっ」
「シゲ、おはよ！」

集まって私の倦怠期のトークに花咲かせてる女子11人(プラス照史くん)
近くにいるし、聞こえてるし…

その照史くんの席にシゲが後ろ向きに座る。

「何があったん？」
「…ううん、大丈夫」

こうやって聞いてきてくれる人って少ないと思う。
貴重な人。
普通他人の事なんて興味ないのに。


「小瀧くんと、昨日帰ったやん？」
「うん」
「上手くいかへんかった？」

言わなくてもわかってくれる人なんて、
もっと少ない。

「ん？」

無理には聞かないのに、
言いやすい雰囲気を作ってくれる。

シゲって、人として尊敬できる。


「…この前、ラーメン屋から出てきた望くんと会ったの」
「ほぉ、小瀧くんもラーメンくらい行くやろな」
「それは全然…」


首を傾げたシゲ。
めんどくさいって絶対思われる…けど、

「でも、女の子と2人で出てきて…」
「…おぉ、」

ふはって笑ったシゲ。
全然面白くないのに。


「こっち本気！」
「いや、それはそれは恋特有のやつやん」
「…え？」

恋特有のやつ、って？

「言うたらええねん、全部」
「え？」
「小瀧くんに、『女の子と2人でいたからちょっとだけ妬きました』って」
「えっ妬く？」
「うん、ヤキモチな。それ」

おでこをツンと人差し指で押される。

「ほら、思い立ったら即行動やろ
携帯貸して」
「えっ…はい」

渡せば、シゲは耳に当て出す。

「えっ、」

〈…はい〉

電話はもう繋がっちゃった。

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