問いの少女 (ページ8)

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設問1、要らない人間の話ページ8

…今はそんなことを考えている場合では無いのか。
この場所からとりあえず抜け出さなければならない。

「…先生、質問です」

私がぼそりという。

「その場に居るだけで周りを傷つける人間は、この世界にいらない人間ですか」

「それは何故？」

「…私自身がそうだった記憶があるからです」

とある、オンラインゲームで。
私の発言は、どこのサーバーに行っても人を傷つけた。

…そんな記憶がある。

「誰かの悪は、誰かの正義であるように、君が言ったことが全て悪だとは限らない。そして、その悪の発言が冗談だった可能性もある。君は西の出身だから尚更ね。」

「…つまり？」

「つまり、君は要らない人間ではない。」

「…そうですか」

ああ、なんてつまらない答え。
心が救われることの無い、ただの一般回答。

要らない人間なら、バッサリ切ってしまえばいいのに。それか、規範に従って、人を否定する発言が出来ないのだろうか？

だとしたら、ただの意気地無し、ね。

「そういう質問ができるとなると、脳は正常なようだね。考える力はあるようだし」

「…そうですね」

お医者さんはなにかをメモ帳に書き始めた。
ちらりと見てみると、

・脳の異常なし
・自己否定感強め
・過去の記憶あり

と書かれている。

自己否定感…か。確かに。
私は要らないとは思う。

彼はメモ帳をしまうと、「じゃあ…」と言い、

「君の存在意義は分かる？」

その質問は、私には分からないのものの一つ。
そして、私が要らない人間だと思う理由の一つ。

「無いです。私の存在意義は、無いです」

はっきりとそう口にする。
するとその医者はケラケラと笑った。

笑うところなの？そこ…

「ごめん、笑ってはいけないところなのは分かってるんだけど…そこまでハッキリと、無表情で言う人は見たことなくてさ」

「そうですか…」

今も尚笑い続けているその人。
ほんとうによく分からない人である。

ただ、この時から既に、悪印象は消えていった。