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後日談 ページ19

「……ピザトースト。」

「え?」

「あっ、ううん、なんでもない。」


目が覚めたら、ピザトーストのいい香りがした。横に大っ嫌いなおばあちゃんが居る。

クリーム色のよくある壁で、
周りには少し汚れた家具やテレビがある。
もうあの汚れのない、真っ白な空間はなくなったのだ。


私は用意をして、すぐにアパートを出た。
昨日か一昨日吸ったはずの汚い空気が、何故か美味しく感じる。

相変わらずタバコの吸殻がたくさん落ちている道を歩きながら、あの精神病院のことを思い出す。


「良かった、これで、のくだりは、親への失望が無意識に見せたってところだろうな…」


ボソリと呟く。
うちの親は離婚している。
失望することもよくあった。けれど、やはり大事な家族だ。もし捨てられても、一生慕うぐらいの決意はある。

そして、やはり、
精神病院で一番印象に残ったのは、希さんだろう。


私に、欲しい言葉を沢山かけてくれた。
優しさと希望を分けてくれた。
彼を無意識に望んだから、私は今こうして前を向けている。

悲しいけれど、この夢を見ていなかったら。
私は死のうとしていただろうし、でなくても生きる気力なんてものを捨てていたはず。


この苦しみも悲しみも、
この思い出も全部含めて私だ。


さて、私はまた、繰り返しの日々に戻る。
電車に乗って、学校へ通って、帰る日々。

けれどその一日一日が大事で、幸せだ。
孤独じゃなくなった訳では無いし、なにか改善された訳でもない。


けれど、私の中で何かが変わった。
それだけは確か。

私が何を望むか、何を信じるかで、
世界は変わる。そういうことだ。



…私を押し潰そうとしてた石版は、
知らないうちに消え去って希望となっていた。

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作者名:桜花 | 作成日時:2021年2月10日 13時

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