決別の決心 ページ17
「…先生」
「なに?」
「あなたは味方ですか?」
ストレートに疑いをぶつければ、
思った通り一瞬動揺を見せる。
「…えっと?」
「だから。あなたは味方ですか?」
「……」
とてもバツが悪いような顔をしている。
でもこの人は、私が引かない限り話してくれる。何故かは知らないが。
案の定、担当医は口を開いた。
「君が、どちらの方向に走ろうとしてるのか、によるかもね。」
どちらの方向。
衝動か規範かということだろう。
「どちらもという選択肢はないんですか?」
「あるわけないでしょ。」
「…本当にそうなんですか?」
「…君は時々可笑しいことを言うね。事実を認められないのはいけないことだよ」
「事実というのはねじ曲げることの出来るものだと思います」
「…ひねくれてるね」
はあ、と担当医がため息をつく。
もしかしたら、そろそろ決着が着く頃かもしれない。
『衝動に従う』か『規範に従う』か。
答えが出る頃かもしれない。
いや、出さなきゃいけない。
決断しなきゃいけない。
たとえ私が狂おうと、決めなきゃ。
「…希さん、私決めます。決別です」
担当医の目を真っ直ぐ見る。
その目は揺れていて、恐怖や焦りを写しているようにも見えたが…今は関係ない。
私は立ち上がり、担当医を置いて病室へ戻った。
…
…
…
…
私はまた、ここに戻ってきた。
『問いの石版』に満ちた、私の頭の中に。
順番に答えを合わせる。
何故に、何故ならを。
何という問いに、何を。
だいぶスッキリしたところに、
衝動と規範の石版が現れる。
衝動の石版の文字は、歪んでいて、歪で、前に小説を読もうとして読めなくなっていた踊る活字そのものだった。
規範の石版の文字は、綺麗で、堅苦しくて、かなり前に読んだ小説の活字そのものだった。
_『衝動に従う?』
_『規範に従う?』
もう答えは出ているはず。
この答えをはめれば、未知の世界が広がる。
衝動と規範というふたつの方向しかない世界から、三つの方向に広がる世界に。
私はその答えを答えようとした。
__「やめてっっ……!」
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作者名:桜花 | 作成日時:2021年2月10日 13時