【ハリ】私がトリップした話【ポタ】 (ページ1)

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『これ、お願いしまーす。』

検品し終わった品物が入った箱を別の従業員に渡す。

店「ナマエちゃんお疲れ様、これやったら終わりで良いよ。」

『はい、了解です。』

(さて、やるか…。)

割とこのアルバイトは好きだったりする。
興味のないものでも色んな品物を見るのは楽しいし、たまに好きなアニメのグッズも廻ってきたり。

箱を開けるときはどんな物が入ってるかなんてちょっとドキドキするくらい。

(…あ！)

本日最後のお仕事はその日の中で一番嬉しい内容だった。

顔が自然とニヤける。

ハリーポッターのグッズの検品。
杖や、ローブなどのグッズが入っていた。

恐らくあの関西の某テーマパークにでも送られる物だろう。

(毎日ハリポタグッズなら何時間でも働けるのにー！)

いつもより丁寧に…いつも丁寧だが。
検品目的よりもその物を眺める目的になりつつあった。

(よし、これで最後…！)

故意的に検品を最後に廻したのは、もちろん大好きなキャラクターのもの。

(こ、これがスネイプ先生の杖…！！)

もちろん作り物であり言ってしまえばオモチャ。
だけどサイズや見た目全てが映画で見ていたのと同じ杖なのだから見ていて興奮するのは当たり前のことだった。

舐めまわすように杖を見る。
関西なんて滅多に行けないしここで目に焼き付けておく他ない。

『あっ、』

しまったと思った時にはもう手遅れだった。
手から滑り落ちた杖が地面に落ちる前に手を伸ばした。

ｺﾞﾝｯ!!

『っっ！』

机の角に思いきり頭をぶつけたのであろう鈍い音がした。

人って本当に痛い時って声が出ないんだなあ。
なんて呑気な事を考えて床に倒れた。

最後に私の視界に映っていたのは見事に真ん中からバッキリと折れている大好きなスネイプ先生の杖だった。

(ああ…せんせ…、ごめ…ん、)

私の意識はそこで途切れた。

――――――――

『…ん。』

目を覚ますと天井が、それもものすごく黒い天井が見えた。

顔を横に向けてみる。
まるで牢屋のような感じの部屋。

半分以上の壁がビンのような物で埋め尽くされていて、ビンの中には見たことの無いような、草。
何だか変な薬のような臭いも部屋に充満していた。

(まって、私…誘拐された…？バイト先で倒れて…、それから、どうなったの…。)

意識が無くなったのだから覚えているはずがない。

部屋を見渡してみる。
そこには誰もいなくて、外から話し声が聞こえる事も無かった。