やぶくんとひかるくん【３】（短編集）

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薮side




ひかるの様子が可笑しいな…、とは思ってた。


だけど、俺と話しはじめたらそんなこと
無さそうだったから安心してたんだけど…、




『…ひかる、本当に飲み物買いに行くのかな』


｢ほぇ？…いや、飲み物を買いに
行くって言ってたじゃん笑｣


『いや、そうなんだけどさ……』



なんか…楽屋を出ていく時のひかるが、

苦しそうな…必死に何かを我慢してるような…
俺にはそんな顔に見えた。



｢…そんなに気になるなら、いけばいいじゃん｣


『いや、でも…伊野尾…ゲーム……悪いし…』


｢…薮さ、自覚ないのかもしれないけど、
顔に、“早くひかるに会いたいです”って書いてあるよ？｣


『え………？』


｢ほら、……いってらっしゃい｣



そう言うと、伊野尾は俺の肩を
軽くポンっと押した。

人のこと見てないようで意外と見てる、
同期のこいつはいざと言うとき頼りになる。



『……ありがとう。』


伊野尾に言うというよりは、
もう呟くような感覚で。

急いで楽屋を飛び出してひかるを探す。



『っ…どこだよ…』



昔からそうだった。

気づいた時にはもう遅くて、
隣にひかるはいなくて。

何度、その手を離しかけたんだろう。



『ひかる…どこ……？』



そんなに時間は経ってないはずなのに、

近くの自動販売機やらトイレやら
全部探しても全く見つからない。


1人で…泣いたりなんかしてないよな？


ひかるが辛い思いをしてるなら、
俺がそばにいてやりたいのに…、

それが出来ていない自分に腹が立って
目の奥がツンとする。


泣きたいのはきっとひかるのほうなのに。

きっと、泣かせてしまう原因を作ったのは…俺なのに。



ねぇ、ひかる。

もし辛いこととか苦しいことがあったなら、
それを2人で分け合おう？

1人で全部…抱え込まないで。



ずっとここで1人で立っていても何も変わらないから
またひかるを探しに足を進めようとしたときだった。



｢………あ！やぶ！｣



相手が誰なのか、振り返らなくても
この声を聞くだけで分かる。



『…ひかる………』

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