やぶくんとひかるくん【３】（短編集）

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光side



『ひ〜か〜るっ！』



薮が、あの女の子のところから帰ってきた。




『ほら、次あそこ行こうよ?』

そう言って、俺の手をなにもないように握って
そのまま歩き出したやぶ。


手から直に伝わってくる薮のぬくもりに、
心までポカポカしてるような気分になる。



…けど、嫌でも聞こえてくる周りの声。



｢え、?もしかしてそっち系の人、?
顔はいいのに残念ね、｣


｢あの顔ならモテるだろうに。世の中不思議よね〜｣




やっぱ。…やっぱ、薮の隣にいていいのは
俺じゃないんじゃないだろうか。

この声…絶対、薮にも聞こえてる、よな………。



『ひかる、?どうした?行こーよ?』



それなのに薮は、俺に気を使わせないためか
何事もないように接してくる。

時にはそれが俺を安心させる時もあるけど、


今は、すっげえ……不安になる。



薮が、気を使ってくれてるんじゃないかって。



本当はもう俺なんかといたくないけど、
しょうがないから…

もう、離れることなんかできないから、

一緒にいてくれてるんじゃないかって。



そんなこと…絶対そんなことないはずなのに、
ある訳ないのに考えてしまう。



『…、ひかる?』



いきなり止まった俺を見て、
不審そうな声をかけてきたやぶ。




｢……やぶとは…友達、だよね｣


『………………は?なに言って、』


｢いやぁ〜友達とでかけるの楽しーな！
あっ！あそこ行こーぜ?ほらっ早くしろよ！｣



俺が、そう言って走り出すと、後ろから

『はっ?！ちょっと待てって！』っていう薮の声と、

｢なんだ、ただの友達なのね｣っていう
知らないおばさん(?)たちの声が聞こえてきた。



薮と俺は…友達。

恋人、なんかじゃなくて、“トモダチ”。



そうだよ。

薮と恋人同士じゃなくなったって、
トモダチでいればいいじゃん。

やぶに…好きな女の子ができて、結婚したって…

トモダチでいれば祝ってあげることだって
出来るんだし、それが1番薮のためにもなるじゃん。



“コイビト”なんて関係やめて、昔みたいに
“仲のいいトモダチ”に戻ればいいんだ。


近づきすぎることもなく、離れすぎることもなく。



それが…1番いいじゃん………！


なんでこんな簡単なこと、今まで気づかなかったんだろう。

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