やぶくんとひかるくん【３】（短編集）

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薮side




驚きすぎて、声が出ないって
まさにこの事だと思う。


｢ひかる………これ、｣


『へへへっ…なんかね、デビューしたばっかの頃かな?

もう俺には出来ねー！って思って…それで、
夜、いきなり家を飛び出したことがあったの。

そのときに、ここ見つけて…
そっから、ちょっと落ち込んだときとかは
ここに来るようにしてるんだ。

今まで、誰にも教えたことなかったんだよ?
教えたの、薮がはじめて。』



目の前に、ビルとかの光が綺麗に輝いていて、
本当に…言葉に出来ないくらい綺麗な景色が広がっている。


しかも、少し山の上になっているから

空気も澄んでいてすっげー気持ちいい。



『ほら、薮。上見て?』


まだなんかあるのか?と思いながらも、
ひかるに言われた通り上を見る。



｢なにこれ……！｣


『綺麗でしょ?星空。』



都会なのに こんなに綺麗に見えるの?ってくらい、
これってプラネタリウム?ってくらい、

本当に本気でそう思うくらい綺麗な星空が

見上げた先には広がっていた。




『………やぶ、誕生日おめでとう。』


俺が綺麗な星空に感動してたら、
いきなり呟くように吐き出された“おめでとう”。



『……あのね?誕生日、忘れてたわけじゃないんだよ?

なんか…薮とこういう関係になってから
初めての誕生日だって思ったら…

すっごい特別なのにしたくて…考えすぎちゃって…

結局何すればいいのか分かんなくなっちゃったの。


ごめん…………』



そんなん、…気にしなくていいのに。

ひかるのその気持ちだけで俺は嬉しい。



そう伝えようとした瞬間、

『だからこれあげるっ！』ってひかるは俺に
なにかを投げてきた。



｢………………………手紙、??｣


『何あげればいいのか分かんなかったから…

俺、いつも素直になれなくて、
面と向かって気持ち伝えられないから…

手紙にすれば、大丈夫かなって思って。』



ひかるはそう言うと、立ち上がった。



｢え、まさか、これでひかる帰るの?｣


『だって…目の前で手紙読まれるの恥ずかしい』



えぇぇえぇえぇ?！嘘だろ?！



だけど、俺が

｢今日くらいいいじゃんかよぉー！
俺の1年に1回しかない誕生日なんだから！！｣

ってたくさん言ったら

最初は『帰る！』って言い張ってたひかるも
俺の押しに負けたのか(?)

“ずっと耳塞いでるからな！”ってことで

なんとか、‘’帰る”ってことはなくなった。

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