やぶくんとひかるくん【２】（短編集）

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光side



｢ひかる…、俺と結婚してくれませんか？｣



そんなの…答えは１つしかないじゃんか。

溢れそうになる涙を堪えながら、
薮からの…最高のプロポーズに答える。


『当たり前じゃん…！
薮こそ、こんな俺でいいの？

嫉妬深いし…すぐ泣くし…面倒臭いやつだよ？

もう一生離れられないよ？』



｢そんなの、Jr.の頃からずっと一緒なんだから
もう昔っから知ってるわ。

もし、ひかるが離れていきそうになっても

俺が、絶対離さないから…
ひかるこそ、覚悟しとけよ？｣


『やぶぅ…ありがとうっ…』



幸せすぎて、苦しかった。


薮は、俺が言った“結婚”について、
スルーしてたわけじゃなかったんだ。

ちゃんと…薮なりに考えてくれてたんだ。



｢ひかる…じゃあ、ここに名前 書いてください｣


そう言って薮にペンを渡される。


‘’夫になる人”のところには、
既に｢薮宏太｣の文字が書き込まれてて、

分かってはいたけど…

“妻になるんだ”って思ったら、
恥ずかしくて胸がドキドキした。


“八乙女光”ってたったの四文字、
生まれてからずっと書いてきた俺の名前を
書けばいいだけなのに、

すっごく緊張して…手が震える。



『やぶ…どうしよう…幸せすぎて、
こんなん…俺…可笑しくなっちゃうよ…』


｢俺も…それ書くとき、すっげー緊張した。｣



薮も…同じなんだ。

なんでも上手くこなしてしまうあの薮も、
緊張したんだ…


そう思ったら少し緊張もほぐれて、


ゆっくり、ゆっくり婚姻届に自分の名前を書いた。


こんなに思いを込めて自分の名前を書いたのは
きっとこれが初めてだ。



『ひかる…手 出して？』


俺が婚姻届を見ながら幸せに浸っていたら
不意に呟かれたその言葉。

…少しだけ、期待してもいいよな？


薮のほうを見ると、手元には
キラキラ輝いた指輪があって。


俺がそっと手を出すと、薬指にはめてくれた。


『すっげー綺麗だし…サイズピッタリ。』

｢それ、1からオーダーして作ってもらったんだよ｣


確かに、よく見て見るとリングのところに
赤と青の宝石が埋め込まれていて、

リングの裏には俺と薮のイニシャルが掘られていた。



『やぶ…本当に…ありがとう…
俺 絶対、今日のこと忘れない…！』


そう言うと、今度は薮から抱きしめてくれて。


全身が薮の匂いに包まれて、
本当に…言葉に表せないくらい幸せで…


もう、溢れる涙を止めることができなかった。

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