やぶくんとひかるくん【２】（短編集）

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光side



｢……る？…かる？……ひかる！｣


『…えっ？』


｢え？じゃねぇよ！何回呼んだら返事するんだよ｣


『あ…ごめん、』



どうやら、いろんなことを考えてるうちに
伊野ちゃんは俺のことを呼んでたらしい。



｢すげぇいろんな顔してたけど大丈夫？｣


『うん…、大丈夫。』


｢体調でも悪いなら言えよ？｣


『ありがとう…、』



だけど現実、体調悪いわけでもないから
いつも通り打ち合わせも進んで、

年内最後のらじらーも無事に終わることが出来た。


反省会で伊野ちゃんに｢噛みすぎ｣って笑われるくらい
たくさん噛んでしまったけど。笑



♪ プルルルル…


伊野ちゃんとあーだこーだ言いながら歩いてたら
突然鳴った俺の携帯。

画面を見たら…“薮宏太”の文字。



｢出なよ？｣


『ん、…ありがとう。』



久しぶりの薮との会話に少しだけ緊張しながら、
電話を手に取る。



｢もしもし。俺だけど…ひかる？｣


『うん、俺。…どうしたの？』


｢あの…今日が何の日かは分かってるんだけど…
俺、用事あって…伊野尾の家行かなきゃだから…、

だから……今日は、帰れそうにない。

だけど、明日………｣


そこからも薮は喋っていたみたいだけど、
“今日は帰れない”って言葉があまりにも衝撃的で

他は、なにも聞こえなかった。



｢あの、…ひかる、聞いてる？｣


『え？…あぁ、聞いてる。』


｢よかった。…じゃあ、そういうことだから…
ごめん、またな？｣



そう言って切られた電話。


今日が何の日か分かってるのに伊野ちゃん家って…

どういうこと？


2人の間に、何があるの…？


俺より、大切な用事って何…？




｢ひかる？もう話終わった？って…え？！
…なんで…何で、泣いてんの…？｣


伊野ちゃんに言われて、自分が泣いてるって気づいた。


『薮が…やぶが、今日は帰れないって…
伊野ちゃん家に…行くから…帰れないって…っ

どぅしよ…っもう、重いからうざがられてっ…

嫌われたのかもぉ…っ』


｢え？ちょっと、落ち着けひかる。
絶対、そんなことないし大丈夫だから。｣


『伊野ちゃんに何が分かるんだよっ…！

だいたい、伊野ちゃん家に行くから薮は
帰ってこれないんだよ…？

最近2人すっげぇ仲いいし！
もう…なにがなんだか分かんねぇよっ…』

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