やぶくんとひかるくん【２】（短編集）

寂しいの。 ページ35

光side



『はぁぁぁ〜〜〜〜……』


スタッフ｢疲れましたか？大丈夫ですか？｣


『あ…すいません、大丈夫です』


スタッフ｢無理せずちゃんと休んでくださいね｣


『ありがとうございます…』





あるドラマの撮影のためにここに来て2週間が経った。


俺の大好きな演技の仕事で、
決まった時はすっげー嬉しくて。


マネージャーに『地方に泊まり込みだ』って言われて
どんな風になるんだろうっていう期待でわくわくして。


監督さんとかに役柄のこととか聞いたり、

メンバーにも祝福してもらったんだけど…





…聞いてない。




薮が…薮がいない生活がこんなにも静かで、
少しだけ…いや、すごく寂しいなんて…聞いてない。


もちろん、演技をしてるときは
そんなこと思わないけど、



夜だったり、ふとした休憩時間にすごく寂しくなる。



来てから2.3日は新しい発見の毎日で
“薮がいないと楽だわ〜”なんて思ってたのに。



ここでの生活に慣れるにつれて、
どんどん大きくなる俺の薮に会えなくて

“寂しい”気持ち。




…いや、寂しいと認めるからそう思うのかもしれない。



…ただ、ほんの少しだけ薮のことが気になるだけ。





『俺…どうしちゃったんだよ…。』





家を出てくるとき、薮が


｢ひかるがいなくて寂しくなったとき、電話するからな！
まぁ、多分毎日かけちゃうと思うけど！笑｣


って言ってきて。

俺は


『別に俺は寂しくなんかなんねぇし。ってか毎日とか
仕事に集中できねぇわ！1ヶ月だけなんだから我慢しろ！』

って可愛くない返事をしたのに。




…今では、薮の声が聞きたくてたまらない。



薮は毎日かけると思う！とか言ってたのに、
結局この2週間1度もかけてきていない。

なんだよ…薮は俺がいなくて寂しくねぇの？


俺は…今すぐ薮に触れたくて、声が聞きたいのに。



だけど俺が電話かけてくんなって言った以上、
自分から電話をかけることは出来なくて。


薮…電話、かけてこいよ…。





でも…今、薮の声を聞いたら“会いたい”って気持ちが
抑えきれなくなってしまうかもしれないから、

やっぱり今は薮の声は聞かないのが1番なのかも。

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