やぶくんとひかるくん【２】（短編集）

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光side



あのまま家に帰って考えたけど…
やっぱり、やぶに謝ろう。


だから喧嘩の原因を作ってしまったのは俺だし、
電話で謝るのは気が引けたから
直接 会いに行こうって思ったんだけど…




…どうやら風邪をひいてしまったらしい。




朝から起きたらガンガンする頭。

元々 偏頭痛持ちだから頭痛には多少慣れてるけど
鼻も詰まってるし、なにより体が暑い。



きっと昨日 寒いところに薄着でいたり
雪に濡れて体が冷えちゃったんだろう…。




｢こんな日に最悪…｣

やぶに謝りに行くの、明日にしようかな？




｢いや、今日行かないと…｣

悪いと思ったならすぐ謝らないと、
相手が離れてしまってからでは遅い。



職業上、多少体調が優れなくても
仕事に行かなければならないことも多いから
こういうことには慣れているし大丈夫。



そう自分に言い聞かせて起き上がる。



｢…ｯ…｣


正直、体はかなりキツイけど全部薮のため。




無駄な体力を消費したくなくて、
ふらつく体で朝ごはんも食べずに着替えて
やぶの家へと向かおうとしたんだけど…


上着がない。



普段からあまり服装にこだわらないし、
移動とかもマネージャーさんの車だったりで
あまり寒さを感じるときがないから、

上着は1着しか持ってなかった。



でもそれも昨日、やぶの家に置いてきちゃった…



しょうがないから俺は、
ニットの下にヒートテックを着たり厚着して
家を出発した。



上着がないぶんたくさん厚着した洋服のせいで
ごわごわして、歩きにくい。


なるべく早くやぶの家に行くために
人通りの少ない裏道を歩く。


必死に足を進めるけど、風邪のせいなのか
フラフラして…気持ち悪くなってきた。



やっぱり今日は辞めといたほうがよかったかな…



けどやぶの家はもうすぐそこまで来てるから
引き返すわけにもいかない。



｢…ｯ…ハァッ…｣



いきなり目の前がぐるぐる周り出して、
咄嗟にしゃがむ。


…しかも、運の悪いことに雨が降り始めた。




｢…最悪っ…｣




誰か、来てくれないかな…




だけど俺のそんな願いも叶うわけなく、
雨がアスファルトを打ち付ける音しか聞こえない。



…やぶの声が聞きたい。


また必死に立ち上がって朦朧とする意識の中
残り数メートルのやぶの家へと向かった。

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