やぶくんとひかるくん【２】（短編集）

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薮side




撮影もちゃちゃっと終わらせ、急いで楽屋へ戻る。



なんだか伊野尾とひかるが凄いこと...
してるような気がして。




楽屋の前に立ったら、声が聞こえてきた。






『 ねぇ、本当にひかるは俺を好きなのっ...？ 』




『 好きなら...俺を、抱きしめて。 』



...伊野尾の声だ。


なんだか、泣いていて震えるような声。






もうこれ以上聞きたくなかった。

いや、聞いちゃいけないような気がした。





これ以上聞いて自分が傷つくのも分かっていた。





...だけどそこから動くことが出来なくて、
気がつけば静かに扉を開けていた。





ひかるはそれには気づかなかったらしく






俺が入った瞬間、伊野尾のことを抱きしめた。



『 伊野ちゃん、好きだよ...。大好き。 本当だよ？』






...今の俺は、どんな顔をしてるのだろう


自分が好きで両想いだって思ってた人が他の男に
好きだと言ってその人のことを抱きしめている。



もう、涙も出てこなかった。






伊野尾の『 薮。 』と俺を呼ぶ声に

コイツは俺のことに気づいてたんだ...と思う。




ひかるは『 やべぇ 』という文字が顔に書かれるくらい、

そのくらい分かりやすい顔をして驚いていた。



そりゃあそうだよな。


浮気現場 付き合ってる人に見られたんだもんな





まさかとは思ってたけど...、



ひかるに近寄ったらやっぱり伊野尾の匂いと同じ匂いがした。






その瞬間、俺のなかで堪えていたものが
プチっと切れたのが自分でも分かった








『 お前ら...そういう関係だったんだ？本当に大好きとか。ひかる浮気してたんだ、キスしてあんな感じてる声してたのもハグしてたのも手を繋いでたのも、全部お前ら付き合ってるからだったんだ。愛しあってるからだったんだぁ けど光には俺がいるからバレないようにって香水なんかオソロイにしてさ｢ 違う！ ｣ 』




｢ 違う ｣って...。




この状況でよく違うなんて言えるよな。




『 違くねぇだろ... 』




俺はさっきまでとは違って弱々しく吐き捨てた。

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