やぶくんとひかるくん【２】（短編集）

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薮side



知念オススメの店についてから約3時間。


雰囲気も良さげな店で会話もポンポンと進む



料理も相当うまいらしくて、
あの知念も美味しいって言いながら
ここの料理を食べている。


..けど、俺はあんまりここの料理を食べなかった。


今日はひかるが家で待ってるような、
そんな気がした。



ただの自意識過剰かもしれないけど
俺が知念からのお誘いに『いいよ』って答えたとき
一瞬だけひかるの顔が曇ったように俺は見えたんだよな。




きっとシャイなひかるのことだから素直に


『 やぶ、今日は俺の料理を食べて？ 』


なんてことは言えないんだろう





だから俺は用意されてるかも分からない
ひかる料理のために今日は、ほぼ何も食べなかった。





＿＿＿＿＿＿＿＿＿






光side




机の上に綺麗に並べられた俺の手料理。



仕事に行く前から煮込んだりと相当手間ひまをかけた。


今日はやぶの好きなものばっかで
パーティするつもりだったんだ。




俺は。



ココ最近やぶは毎日知念とご飯を食いに行ってて
俺の手料理なんかまったく食べてくれない。




きっとやぶのことだから知念を家まで送ったりしてるんだろうけど
そのせいで帰ってくるのも遅くて。



しかもやぶは少し酔いながら帰ってきて



楽しそうに知念とのことを話すから、見てられなくて
俺がすぐに寝ちゃうからあまり話せてもいなかった。




でも流石に俺も寂しくって、
やぶに俺のご飯を久しぶりに食べてほしくて、
この前あった面白い話なんかも聞いて欲しくて、



だからやぶの好きなものだけ作って
今日は知念より先に俺の料理を食べてくれないかって
誘うつもりだった。


『やぶの好きなもの作ったから今日は俺のご飯食べない？』



って誘うつもりだったんだ。




だけど、今日も..

『こーた？今日も僕行きたいところあるんだけど』

と話しかける知念の姿を見るのが先だった。




やぶは当たり前のように｢ いいよ ｣ と答えていて。



それなのに俺が無理やり
『 今日は俺の手料理食べろ 』なんて言えなくて..





今に至る。


別に1人で食べちゃえばいいんだろうけど、
なんだか今日は早く帰ってきてくれるような気がして。



自意識過剰かもしれないけど薮が
『いいよ』って答えたあと少しこっちを見た気がした。




そんな意味の分からない自信をもち続けて
さっきから2時間も薮のことを待ち続けていた。

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