☆★ ページ13
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『そろそろ、帰ろっか。』
立ち上がり、軽く砂を払って、敷いてくれたタオルを拾おうと伸ばした手は杏寿郎によって引っ張られ、私は体勢を崩した。
一瞬で砂浜に組み敷かれた私の視界は、背中に夕陽を浴びて、私に影を落とした杏寿郎でいっぱいになった。
『え…なに？』
「俺たち、付き合わないか？」
砂を噛んだようにザラザラとした感情が、心を削る。
『夏の恋は、もうしたくないって…』
「わかってる。」
『じゃあなんで…
なんで、そんなこと言うの…？』
心が揺れるのと同時に、自然と声が震える。
「俺なら、その記憶を上書きするさ。
後悔なんて、残してやらない。」
心まで溶かしてしまいそうな杏寿郎の熱視線が私を捉えて、逃げられないと悟った私は、その視線に自分の視線を絡めた。
杏寿郎のことは好きか嫌いかと聞かれれば、断然好きだと答えるだろう。
“身の丈に合った恋愛”
私達は既にこの完成形に限りなく近い。
それでも私は、いつか来る別れを考えるくらいなら、今の心地良い幼馴染のままでいたかった。
大事に温めすぎた想いは私達の間に深く根を張って、宿した様々な思い出が無になることを私は恐れた。
静かに首を横に振った私の涙が音もなく流れて、頬を濡らした。
『私は、ずっと1番の幼馴染がいい。』
この言葉が、杏寿郎に傷をつけるとしても、これを越える情熱は私には無いのだ。
そうか、と静かに言った杏寿郎が私を起こして、抱きしめるようにして背中の砂を払った。
この背中に手を回せたら、両腕でも抱えきれない程の幸せがあったのかもしれない。
…なんて、これはきっと真夏が呼んだ気の迷いだろう。
或る夏の恋は私を赤裸々にして、
孵らない想いを秘めた甘い位に赫く可哀想な太陽に、
欲張りで臆病な鍵を掛けた。
終.
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ゆきの(プロフ) - 伊黒小芭内めちゃくちゃよかったです！！凄い推してるのに，あんまり作品がないので．．．私，伊黒さんと宇髄さんと実弥さん好きなので，とても面白かったです！！！ (2022年2月28日 0時) (
レス) @page30 id: 979384fcc7 (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - あさひゆうひさん» あさひちゃんも読みに来てくれてありがとなァ！！ちゃんと甘く書けてたのか不安だったから、そう言ってもらえて嬉しい！！ルビは最近1番気をつけてる(笑)一緒にお祝い出来て私も嬉しい❤️あさひちゃんのお話も最高だったゾ！！！！ (2021年11月29日 8時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - ひよさん» 早速読みに来てくれてありがとう！ハピエンを匂わせたままにしてたので、このタイミングでしっかり伏線回収させて頂きましたァ！！この実弥くんだから、夢主さんはやっと過去を清算できたのかな、と思ったり…。ひよちゃんのコメント力高すぎていつも文字数足りない(笑) (2021年11月29日 8時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
あさひゆうひ(プロフ) - りりちゃん…！続きをありがとう！甘い!!!実弥さんの甘い言葉の数々にきゅん…素敵な誕生日のお話ありがとう!!!そして、ルビありがとう！助かります！（土下座）一緒に実弥さんのお誕生日お祝い出来てとっても嬉しいです♡ (2021年11月29日 0時) (レス) @page28 id: 9c7376e839 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - りりちゃん、実弥くんの続きを読ませてくれて本当にありがとう!! こうなってくれると良いな、と思いながらの完結だったので、素直に嬉しいです。過去の残像を払い除けられたのは、実弥くんだからか……お誕生日おめでとうございます…!! (2021年11月29日 0時) (レス) @page28 id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：羽糸 | 作成日時：2021年8月7日 20時
