68. 墓参り ページ22
あれから数ヶ月後。
Aは、蓮之助の妹・早月(故人)のお墓参りに行くために､花を花屋で買って墓地へ向かって歩いていた。
「やぁ。A」
「…!ハウル」
名前を呼ばれて振り向けば、そこには正装に身を包んだハウルがいた。
「久しぶり。元気にしてた??」
「うん。元気よ」
「そっか。よかった。蓮之助は??」
「…早月ちゃんのお墓参りに」
ハウルの問いにそう答えると、Aは少し悲しそうに顔を歪めた。
「…そっか。前回の事件でちゃんと和解できたんだったんだね」
蓮之助の過去を知ったハウルも、事情を察して悲しそうに笑う。
「僕もこれから早月ちゃんのお墓参りに行こうかと思ってたんだ。」
「私もなの。」
「そっか。なら、一緒にいかない??」
「えぇ」
Aが返事をすると、ハウルと肩を並べて歩き出した。
墓地へ着き、早月の墓に歩いて行くと､見慣れた背中が見える。
「蓮之助!」
「!」
ハウルが呼ぶと、線香をあげて墓に手を合わせていた蓮之助が気がついて、立ち上がって振り返った。
「ハウル。Aも来てくれたのか」
蓮之助は、穏やかな笑みを浮かべた。
「早月ちゃんのお墓参り…あれから全然来れなかったから…」
「そうか。きっと…早月も喜んでる」
蓮之助は振り向いて早月の墓を見下ろして微笑む。Aは、早月の墓の前に歩み寄る。
「…早月ちゃん。久しぶりね」
Aがそういうと､
「ようやく、落ち着けたね」
ハウルもそう言って笑う。
それから早月ちゃんの墓の花瓶に､花屋で買ってきた綺麗な花達を生けて、線香を挙げて手を合わせた。
あの事件から、蓮之助は早月ちゃんのお墓参りに行くことが多くなった。
早月ちゃんは、霊体と言えど"化けノ神"と言われる妖の部類に入るから、昼間は姿を現さない。
けれど夜になれば、兄の蓮之助のもとを訪れては、離れていた心の時間を埋めるように兄妹水入らずで楽しそうに話しているのそうだ。
この間には、兄の蓮之助がめったに縫うことはないのに、着物を自分で仕立てて、自分で器用に縫ってくれてお墓に供えてくれた、と嬉しそうに報告にきて、その着物を見せに来てくれた。
蓮之助が仕立てて縫った着物は、早月ちゃんに良くに似合う紅生地に白い百合の花が飾られた、とても華やかで見事な着物だった。
蓮之助に聞いてみれば、早月ちゃんが亡くなった日の前から、早月ちゃんの誕生日に贈ろうと思って前々から準備して、忙しい合間も自分で着々と縫っていたらしい。
ホント､妹思いの優しいお兄様だよ。
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作者名：ﾚﾝ | 作成日時：2019年6月22日 18時
