【明治東京恋伽】明治怪盗恋忌憚Ⅱ―森鴎外― (ページ20)

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66. 紅い髪の彼ページ20

「ぐっ！」
ジャンヌは、首を締められながら苦しそうに顔を歪めた。
「ﾜﾊﾊﾊ!!このまま死ねえ！ジャンヌ!!おまえがいたら、"あのお方"の悲願が叶わんのだ！」
蓮之助にとり憑いた妖が、そう叫ぶ。
「あの､お方…?」
Aは、顔を歪ませながら後ろに視線を向けた。妖は、にたりと笑う。
「この明治の夜が、妖の夜に変わる！人間はこの世からすべて消えるのだ！」
「!!…なんですって…!?」
ジャンヌの目が見開かれる。
ーー大切な人達がいなくなる。家族も友達もすべて…この世から。
(嫌だ…!そんな事絶対に!!…冗談じゃないわ…!!)
妖にとり憑かれている蓮之助も同じことを思い付いたに違いない。
彼にも大切な妹がいる！亡くなってしまったけれど、彼の妹は妖になって今も尚、彼の傍で生き続けている。霊体のまま…。
ーーこの世は、人と妖が一緒に共存している世界。良い妖もいれば、悪い妖もいる。
けど、こんな奴等にこの明治の夜に埋め尽くされてしまったら、人は住めなくなる。
こういう人の負の感情が好きな、悪鬼のような妖が蠢く世の中になってしまったら、人は生きられない。
ずっと…
ーー破壊と殺し、犯罪だけが起きる世の中になる、地獄絵図と化してしまう。
「ふざけ､んじゃ…、ないわよ…!そんなこと私がさせない…!!」
ーーそういう妖達から、この明治の夜を守るのが私の……。
「あんたらの好きになんかさせない!!」
ーー魂依の力を持った、怪盗ジャンヌである私の役目!!
ジャンヌがそう叫んだ瞬間。
「ジャンヌ!!」
耳慣れた声が低い声が聞こえた。彼は、蓮之助の首に手刀を放つ。
「!?」
ジャンヌは咄嗟に驚いて目を見開く。
ドサッ。
蓮之助は気絶して、ジャンヌから腕をを話してその場に倒れた。
振り向くと…
「無事かい?ジャンヌ…」
「鴎外さん…?」
自分を助けてくれたのは、心惹かれている森林太郎…こと、森鴎外だった。

(どうして…あなたが…??)

ジャンヌ…Aは信じられない目で鴎外を見つめた。