安吾さんのアシスタントをしております！！弐

５４.ポートマフィアの金髪 ページ11

《樋口 side》

芥川先輩の無線が通じなくなった。
かなりのスピードと水飛沫をあげながら、ポートマフィアの高速艇を沖へと進める。

「お前の助けなど要らぬ！！」
脳内で鳴り響く声。

気付いていた。
先輩が私等必要としていないことを。
それどころか、組織からも必要とされている自信など無い。

上司である芥川先輩の命令も無しに、小型高速艇で救出に向かうなど、とんだ独断行動だ。

先日殴られた頬がまたズキズキと痛んだ。

その時、目的の方向に小さな影が見えた。
ふわふわと宙に浮かぶ二つの黒い塊。

ジャケットにフレアスカートの少女と…………
芥川先輩！！？？

「………芥川先輩！！！！！！」

思わず飛び出た叫び声にビクンと飛び上がる少女。

目が合うと向こうから此方へと近付いてきた。
勿論、空中移動だ。

芥川先輩も彼女について近付いてくる。

『あ、あの！！海に落ちて……拾ったんですけど……。』

探偵社員か？？

色白の肌に、漆黒の長髪、左右で違う瞳の色。
海の光を反射して輝る(ひかる)赤と緑はさながらアレキサンドライトの様だ。

………そう言えば中原幹部への書類で見たことがあったような………。

「あ………ありがとうございます……。」

取り敢えず頭を下げた。
芥川先輩を助けて貰ったのだから。

でも……なんで……？？

『いや、あの、私はあつ…探偵社員の救出に来たんですけど、かなりの高さから海に落ちたから死んじゃうと思って拾いに戻ったんですよ！』

私が不思議そうな顔をしていたからか、何も言わなくてもワタワタと説明をしてくれる。
敵組織の殺人犯も救おうとする考えにかなり驚いた。

「………探偵社の方針で？」

言ってから思った。(そんなわけあるか。)と。
芥川先輩は軍警の指名手配犯だ。
しかも、今回は探偵社員の拉致事件だ。

『いや……独断行動です……。』

「大丈夫何ですか？」

『ダイジョウブジャナイ………』

探偵社員とは言え可哀想になってきた……
目の前の少女は自分の立場を理解したのか、段々と顔が蒼白くなってきた。

「と、取り敢えず、乗ってください！！
貴女、名前は？」

今にも倒れそうな彼女と、既に倒れている芥川先輩を船に乗せ、港へと進み始める。

『武装探偵社調査員のAです。』

「Aさんですか。
私はポートマフィア遊撃隊、樋口一葉です。
この度は、芥川先輩を救って頂き、ありがとうございました。」

彼女は芥川先輩の命の恩人。
例え敵で在ろうとも、手荒に扱う訳にはいかない。

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