安吾さんのアシスタントをしております！！壱

５.坂口安吾の回想 ページ5

《安吾side》

脱いだジャケットを掛けてやるとAは静かに寝息をたてだした。

長い睫毛が、高校生らしくまだあどけない白い肌に影を落とし、夕陽にきらきらと輝いている。

初めてAに会ったのは１ヶ月前。
Aが特務課オフィスまで探偵社の社長に連れられて挨拶に来た時だ。

まだ慣れていないピカピカの仕事着に身を包み、きょときょとと落ちつきなく回りを見渡すAを見た時は驚いたものだ。

この子が探偵社の新入社員か。
こんな華奢な体で武装探偵社の荒事をこなせるのか。
しかも高校に通いながら。
高校時代からこんな世界に身を置くなど、手放すものは数知れないだろう。

種田長官と福沢社長が話している間、きょときょとしていたAは僕と目があうと驚いたように大きな瞳をさらに大きくさせ、恥ずかしそうにニコッと笑った。

…………可笑しい。
顔が熱い。
風邪でもひいたのだろうか？
三徹目では仕方ないか……。

「それではA、これからは探偵社と特務課の架け橋としての役目を全うせよ。
体には気をつけて、無理はしないように。
なんでも相談するといい。
………特務課の坂口殿に挨拶してきなさい。」

『はい。社長。』

……僕に挨拶……？
慌てて緩んだネクタイを絞め直し第２ボタンまであいたシャツを閉じスーツのしわを伸ばして髪を整えた。

『本日付で武装探偵社所属内務省異能特務課坂口安吾参事官補佐アシスタントに就任致しました！！Aです。
よろしくおねがいします！！』

「よろしくおねがいします。
内務省異能特務課エージェントの坂口安吾です。」

それにしても随分長い肩書きだな……。
参事官の補佐をする僕のアシスタントということだろうか。


10分後
Aは僕の前に新しく用意されたデスクに荷物を積んでいる。
ノートパソコン、辞書、カレンダー、など、様々な道具が段ボール箱から独りでに飛び出し、デスク上に整然と並べられる。

念動力の異能者か……。
それならば、高校時代から探偵社にいることも、特殊なエメラルドグリーンとスカーレットレッドのオッドアイにも容易に納得がいく。

「……貴女、綺麗な瞳をしていますね。」

僕がそう言うと、Aは驚いたように大きく肩を跳ねさせ、それと同時に大きな音を立てて辞書が床に落ちた。

僕は何を言っているんだ………！！
「すみません驚かせてしまいました！！」

『いえ、大丈夫です！
あと、Aでいいですよ………安吾さん。』

そう言って笑った彼女は僕に負けないくらい赤い顔をしていた。

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