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２１.ろくでもない一日のイベント ページ22

《中原 中也 side》

職員室の自分のデスクから鞄を取る。
此処も今日で最後。
二度と来る事は無いだろう。
名残惜しい？そんな事は思わねぇ。
元々分かっていた事だ。

いつも通り他の教師達に挨拶をし、職員室を後にした。
駐車場に停めてある愛車に乗り込み、スマホを手にすると、画面に浮かんだのは今回の任務を共にする部下の名前。

無機質な着信音を聞き流し、緑色の通話ボタンを押した。

「中原幹部！お勤め御苦労様です！」

「嗚呼、ターゲットの動きはどうだ。」

緩く車を発車させ、学校を後にする。
所謂普通の高校生のような青春を送った記憶が無いに等しいため、活気に溢れる高校生の生活の場は、俺には多少居心地が悪い。

「突然、普段と違う道を通りだしましたが、
人通りの少ない公園に向かって進んでいるので、其処で決行するのが宜しいかと。」

「分かった。今から向かう。
先にはじめておけ。」

電話の向こうでガチャガチャと準備する音が聞こえる。
くわえた煙草の煙を開いたら窓の外に吐き出しながら、黒で統一された高級感漂う車を操った。


《A side》

公園に足を踏み入れた瞬間、背後に近寄る気配に自然と体が動いていた。

右後ろの首筋にピリッとした痛みが走り、弾き飛ばした大きな男の手からスタンガンが落ちて派手な音をたてる。

そのまま後ろを向いて掴んだ黒服の腕を捻って投げ飛ばすと同時に、続々と現れる、各々武器を抱えた黒服の男達を異能力で弾き飛ばす。

背中から着地していく黒服の男達。
多少可哀想な気もするが、うら若き清純無垢な乙女にスタンガン向ける方が悪いだろう。
国木田さんに習った体術もかなり役にたっている。

「A！！」

大して大きな声では無いけれど、呼ばれた瞬間、空気がビリビリと震え、背筋がピンと伸びる感じがした。
………これが覇気？

そんなことより、私はこの声を知っている。
ついさっきまで同じ空間に居た。
でも、どうして………？

一瞬の間に頭の中を大量の情報が駆け巡る。
昨夜の国木田さんとの話。安吾さんの電話。
夜に乱歩さんと出会ったのは此の場所。

振り返ると、思ったより近くにある人影。
私よりほんの少し高いだけの肩。
男の人には珍しい甘いけれど爽やかな香りがツンと鼻に抜けると同時に、男の拳が私の溝尾に入った。

「悪いな、A。」

『ゥグ！！……カハッ
…………な…かは、らせんっせぇ……』

真っ直ぐ前に倒れた私の体は、中原先生の力強い腕に抱き留められながら、暗闇の世界に堕ちていった。

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