安吾さんのアシスタントをしております！！壱

１７.お久しぶりです ページ18

探偵社を出て社員寮に向かい、歩く。

「お！！Aだ！！
いいところに来たね！！
道が分かんなくて困ってたんだよ〜
社員寮まで連れて帰ってよ。
あ、その前に駄菓子屋さんに行こう！！
喉渇いちゃった。」

私を見つけてパタパタと走ってきたのは我が探偵社が誇る名探偵、江戸川乱歩さんだ。
ブンブン振る右手に握られるピンクと白のペロペロキャンディーが可愛らしい。

『乱歩さん、どうしたんですか？こんなところで。社長と一緒じゃないんですか？』

こんなところ、とは、探偵社近くの児童公園のベンチである。

「僕出張に行ってたからね〜
ヨコハマにはさっき帰ってきたんだ。
あ、これお土産。国木田とかに渡して皆で食べようね。
そんなことより駄菓子屋さんだよA！！
はやく行こう！！」

強引に私にお菓子の箱を押し付け、私の手を引っ張りながら歩きだす乱歩さん。

『ちょっ、そっちじゃありません！』

自由奔放、天真爛漫がピッタリ当てはまる名探偵はこれでも２６歳という、社長に次ぐ年長者だ。

「これ、Aにあげるよ。」

探偵社近く、乱歩さん御用達の駄菓子屋さんを出た瞬間、渡されたのは月明かりに光る水色のラムネ。乱歩さんの左手にも同じものが握られている。

『乱歩さんがお買いになったんですし、飲まれては如何です？私は大丈夫ですよ。』

「二本も飲もうとしたら後のが温くなっちゃうでしょ〜
駄菓子屋まで連れてってくれたし、ほんのお礼だよ！！
こーいう時は素直にありがとうって言っとけばいいの！！
僕が人にラムネあげるなんか珍しいんだから…」

『…あ…ありがとうございます。』

ひんやりとしたビンが手のひらに心地良い。
開け方が分からず困っていたら
「しょうがないなぁ〜」と言いながら乱歩さんが開けてくれた。

月に照らされた道を、ラムネを飲みながら、乱歩さんと並んで歩く。
並んでみたら、思ったより背が高いのでびっくりする。「失礼なやつ。」と呟いた乱歩さんになおびっくり。

『こ、声に出てましたか………？』

「顔見たらそれくらい誰だって分かるよ。」

それが分かんないんだなぁ。
因みに、私が乱歩さんの推理過程を理解出来たことは一度もない。太宰さんと乱歩さんの会話なんかちんぷんかんぷんだ。

気がつけばもう社員寮前。

『乱歩さん、
お土産ありがとうございました！』

「嗚呼、いいよ。それくらい。
それじゃあ、おやすみ〜」

『おやすみなさい。』

部屋に入ってきちんと鍵を掛ける。
ラムネ瓶のビー玉がカランと音をたてた。

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