安吾さんのアシスタントをしております！！壱

１１.電話 ページ12

スマホの画面上に《坂口安吾》の文字が浮かぶ。

『っ……もしもしっAです。
おはようございますっっ。』

話ながらもポタポタと涙が頬を伝い、布団に染みを作る。電話相手に心配をかけないようにするので精一杯だ。

右手でスマホを支え、左手で涙を拭いながらヨロヨロと立ち上がった。

「…！？……おはようございます。
貴女は今日は特務課には顔を出さないんでしたよね。確認のために電話しました。」

………その反応は、
私が泣いてることバレてるな。(苦笑)

布団を片付ける頃には涙も乾き、泣いた後の気だるい感じと喉の乾きがやけに残っていた。
夢を見て泣くことはよくある。
もう慣れたことだ。

『はい。今日は探偵社での仕事なので〜。』

「分かりました。
それから、余り無理をしないでください。
…………………つらいことがあれば
僕でよければいつでも聞きますよ？」

目がカッと熱くなり、涙が溢れだす。

『………っ大丈夫です。ありがとうございます。
……っすみません。』

「はいはい(笑)暖かい格好をして、よく寝てよく食べて、困ったことがあれば回りの人を頼って下さいね(笑)」

『っっ分かりましたぁ。
ありがとうございます。』

「じゃあ、切りますよ？
学校に遅れないように。」

安吾さんの優しい声が熱くなった耳元で響く。

…………切りたくない。切られたくない。

『っはい。さようなら。』

通話停止ボタンが手の中で震えた。

《安吾side》

電話の相手は分かりやすく泣き声で、困った僕はとりあえず業務連絡から話した。

こういう時、自分の不器用さが嫌だ。
太宰君なら的確な対応が出来るのだろうか。

僕の頭の中で、太宰君が泣きじゃくるAを優しく抱き締める。
勝手にイメージしておいて悪いとは思ったが、多少イラッとしたので脳内太宰君には早急に退場してもらった。

Aが次に話した時には、既にいつも通りの調子で、小さな身体に涙を押し込んだことは容易に想像出来た。

この子は何でも一人で抱え込み過ぎる。

「もっと回りの人を頼ったらいいんです。
A一人が抱え込む悩みなんか、みんなでわけたらたかが知れている。
…………回りの人は無理でも、少なくとも僕のことは頼って欲しい。」

真っ暗になったスマホの画面に向かって呟いた。

近づく足音に慌ててデスクへ向かう。

「おつかれーっす。安吾先パイ、
Aちゃんに電話っすかぁ？(笑)。」

「そうですが、何か。今日の仕事の確認です。」

「誰もそこまで聞いてないっすよ？(笑)」

ニヤニヤ笑いを続ける部下に鉄拳をお見舞して、今日も特務課の一日が始まった。

１２.素敵な帽子の担任→←１０.夢と現実の橋渡し 《シリアス過去・オリキャラ注意》

• 金　運: ★☆☆☆☆
• 恋愛運: ★★★☆☆
• 健康運: ★★★★★
• 全体運: ★★★☆☆

ラッキーアイテム

革ベルト

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す