旅の最果てに [黎明のアルカナ]

episode 3 ページ5

【Aside】




私には
こんな居心地の悪いお城の中でもただひとつ「楽しい」と感じられる時があった。





それは
自分で育てた薬草でいろんな薬を作ること




もし

この薬を使ったことで
誰かを苦しみから救ってあげられたり
誰かの笑顔がとりもどせたら………？




そんなことを考えながら
薬草をすりつぶしていくこの時間が
何よりもわくわくする。





薬草の
苦いような酸っぱいような独特な匂いを手であおぎながら私は笑顔になった。





A「うん…いい感じ！」





私は出来上がった薬草を
要らなくなったジャムの小瓶に綺麗に洗ってから入れた。




A「今日はやっぱり
これを配りに行こうかしら？ああ！悩むわ」



いつも
薬が出来上がった日は
セナンやベルグートに行き
薬を買えない人や必要としている人に配るのが昔から私の日課で趣味だ。




薬を飲めば助かるはずの命なのに
飲めずに死んでしまうのは
やっぱりおかしいことだと思う…。





亜人だから
という理由だけで薬を貰えないのも

お金が無いからという理由だけで

ちゃんと診断してもらえないのも






A(そんなの…絶対に間違ってるわ…)






私は青い髪をかきあげて
いつものように上の方で結い上げて

旅をする時には必ず着る
キャミソールの青いワンピースに急いで着替えた。



出来れば
耳の穴に埋まった宝石も
亜人や貧しい人が近寄りがたくなってしまうかもしれないので

とって行きたいのだが
かなり頑丈に埋められてしまっているのでとることが難しい。




諦めてところどころ皮のはげた
底の削れたパンプスを履いた。






それから


麦で作った手作りの籠を持ち
心踊る気分で
セナン行きの電車が通る駅まで歩いて向かった。

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