三回目 ページ43
千鶴さんへ報告文を書く。先ほどの結論を文にまとめただけで手間のかからないものだが、一応これも私の仕事だ。きっちりこなさなければならない。一番字が綺麗だからという理由で抜擢された。こういうことは得意だし、皆の役に立てるなら嬉しいものだ。
「ルナちゃーーん！国語！国語がわからなぁぁぁぁぁぁぁぁぁい！！」
「お姉ちゃーーん！国語が得意教科なのお姉ちゃんしかいないの！古文って人生に必要あるのぉぉぉぉぉ！？」
「…」
「「うるさいって思わないでぇぇぇぇぇぇぇぇ！！」」
役に立てるのは嬉しいが、この二人にはそろそろ自立してもらいたい。まぁこの部活の中に文系が私しかいないのが問題なだけだが。逆に皆がなぜ実技ができるのかと聞きたい。あと夢倉君は何で五教科の中で国語だけできないのかが聞きたい。誰か家庭科と技術、体育の実技を教えてくれ。
「…気狂君。ここの問題を教えていただけませんか？」
「僕ってことは…保健体育かな？」
大正解。気狂君は保健体育と理科が私よりも点数が高いのでたまに教えてもらっている。彼はたまに言葉を忘れることこそあるが得意という教科はやはり教えるのが上手い。それは他の人でも同様だが。
「えっと…どこ？」
「大問３の(１)です」
「えっと…ごめんね、最近目が悪くなってきてて…問題文読んでもらえないかな」
「あぁ。そうなんですね、ごめんなさい」
目が悪くなったって…また暗いところで蛙でも見ているのだろうか。それとも以前興味があると言っていた烏？
「…なるほど。ありがとうございます」
「いやいや、僕みたいな凡人がルナさんの役に立てるなら嬉しいよ」
…多少自分に悲観的な部分はあるが、彼は良い友人だ。
「貴方は凡人ではありませんよ。ちゃんと能力を持った”天才”です」
「そうかな。ルナさんがそう言うなら、きっとそうなんだろうね」
「はい。夢倉君の言うことはあまり気にしないでください」
「…うん、ありがとう」
…凡人は彼ではなく私の方だ。ただ運がいいだけで他には何の取り柄もない一般人。通常であれば彼らとはあまり関わらない存在のはずなのだが。
「貴方のそういう素直なところは夢倉君にも見習ってほしいですね」
「なになに？今ルナちゃんおれのこと呼んだ？」
「呼んでません。勉強しなさい」
「辛辣ぅ！」
ただ、嫌なわけではないしむしろこの日々は楽しい物ばかりだ。私だって苛められたいというわけではない。…一度苛められる気分を味わってみたいというのはあるが。
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作者名：future*show | 作者ホームページ：
作成日時：2020年12月3日 17時
