二勝目 ページ19
「…今のところは、好きな人はいません。作る気も…あまり」
「そっか。…じゃあ、おにーさんと付き合ってみるかァ？」
「結構です」
ニコッと笑って答える。いつか処分するときがくる場合、情があると困る…と考えてしまうのは、”パーティー”時代の悪い癖だろうか。
「そーか…」
「…ボクが”ちゃんとした女の子”だったら…もしかしたら、居たかもしれませんね」
「俺とか？」
「それはどうでしょう」
面食いだったらあるかもしれない。不良好きとか、ちょい悪好きみたいな…あと、年上好き？
「金に目を眩ませたりとか？」
「あるかもしれませんね」
「おにーさんと結婚したらいろいろ服着せてやれるぞ？一応簡単な料理なら作れるし」
「…考慮します」
性格がもう少しおとなしかったら…
「もう少しクールだったらありましたかね。というか柳瀬さん結構身長高いですよね」
「凹ちゃん年齢差とか気にしないタイプ？」
「ボクは気にしませんよ？ニ十歳差のカップルもいる時代ですから」
「そういう問題か？」
「気にしてたら演劇部なんて入ってませんよ」
演劇ならいろいろと強引な設定あるからな。
「おにーさんもまったく気にしねェけどな。よし、結婚しようぜェ？」
「さっき言った通り、あなたと結婚する予定はありません」
「ひでェなァー…」
「…何で頭なでるんですか」
「なんとなく」
小さいころに頭を撫でられるなんてことをされなかったから違和感がある。兄にも、もちろん両親にも…
「…凹ちゃん、やっぱ女子だろ」
「へ？」
「さっき”ちゃんとした女の子だったら”って言ってたけど、本来なら”もし、女の子だったら”って言うはずだ。凹ちゃんが男だとして、”ちゃんとした”ってのは違和感がある」
…墓穴、掘った！
「”ちゃんとした”ってことは、今はちゃんとしてねェってことだ。…つまり、凹ちゃんは」
「…」
「”男子のフリをしている女子”…ってことになるよなァ？」
「…そう、ですね」
どうしようどうしよう、バレたバレたバレたバレたバレた！！
「否定しねェのか？」
「意味がないので」
「ふーん」
紅茶を飲み切る。この人が最後まで飲んだ光景を、ボクは見たことがなかったかもしれない。
「それを知ってどうするんですか？」
「何もしねェよ。それこそ俺にとって”意味がない”んだから」
「…そうですか」
この人は馬鹿っぽいけど、理性や知能がある。その上、ボクらとは違う【能力】を持っている。…おれたちは、この人の近くにいていいのか？
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作者名：future*show | 作者ホームページ：
作成日時：2020年12月3日 17時
