二勝目 ページ11
「そういうしかないだろ。俺は何とも言えないし」
ヒトの家事情に首は突っ込みたくない。ヘコの家に居候させてもらってる俺が言うのもアレだが。
「…竹梅家が元々分家側だったのは習ったか？」
「習った。知り合いに竹梅家の跡取りがいるから、そっちからも」
「じゃあ元々本家にいた家はどこか知ってるか？」
「花宮家だろ。まだ勢力は残ってるけど奪い返すほどの力はないらしいな」
「よく覚えてるな」
それが能力だからな。
「唯一竹梅家に下克上できるのが節松家ってことも覚えてるだろ？」
「もちろん。その理由も知ってるからな」
「流石学年一位」
「学年二位のことも褒めてやってくれ。ヘコは俺よりも勉強してるから」
正確に言うと、”パーティー”が解散したからやることが無くなって勉強してるだけだけど。
「前までは五十位くらいだったのにな。どんな家庭教師を雇ったんだ？」
「雇ってない。そんな金ない。しいて言うなら俺とトツ…ニイサンだ」
「無理に兄さんって呼ばなくてもいいと思うぞ。周りに不自然に思われないためといっても桜野みたいに実の兄でも呼んでない奴がいるんだから」
「…考えてみる」
ヘコは…どうしてもトツが嫌いだからな。兄弟だとしても性格が真反対だからしょうがないが。でも目立った喧嘩はしないし、仲はいい方だと思うけど。…後でヘコに聞いてみよう。
「着いたな。…覚悟しとけよ、匿名」
「元々してる」
ガラッと音を立てて道場の扉を開ける。それと同時に三年生のセンパイが近くの壁に飛んできた。
「…来たな。匿名歌舞斗」
「センパイ気絶してる」
「おい、無視するな！」
脳震盪か。セカンドインパクト症候群とか言うのがあるらしいからあまり刺激しないようにしよう。ヘコにそう言われたからな。
「アテラザワ先生。転ばせといたほうがいいか」
「一応あっちの畳に運ぼう。バイタルチェックできるか？」
「できる。起きるまで近くで様子見てていいか？バランステストとかさせときたい」
「よろしく。他の奴らは稽古に戻れ」
念の時のためにヘコに対処法教わっといてよかったな。タオル濡らして冷やさないと…
「匿名。何か手伝うことあるか？」
「…イミ。丁度いい、冷えたタオル持ってきてくれ」
「了解」
このうちにバイタルチェック…あと親に連絡もしたいけど、それは意識戻ってからでもいいか。
「持ってきたぞ。どこに置けばいい？」
「頭」
指示するとイミはすぐに適切な位置にタオルを置く。さて、状況を把握したいな。
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作者名：future*show | 作者ホームページ：
作成日時：2020年12月3日 17時
