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戻ってきた俺に気づいていないのか、一点を見つめながら自身の指をくわえている彼の姿は、まるで離れた母親を待つ赤ちゃんのようだった。

俺は湧いて出てくる母性に気付かないふりをしながら、康二に近づく。
隣に座った時の衝撃でようやく俺の存在に気がついた康二は、指をくわえたまま俺のほうを向いた。


「康二、手出して。消毒して絆創膏貼るから」
向「……ん」
「…いや、そのままだと何もできないって。口から離しなよ」
向「……ぁ、そやった、ごめん」
「ん、ありがとう」


まだ熱は測っていないからわからないけど、きっとそれなりに高い体温になっているとは思う。
じゃないとこんなぽわぽわしないしね、大人が出す熱で。

ちょっと沁みるかも、と伝えてから消毒液の付いたコットンで傷口を拭く。
ぴくっと身体が反応したのがわかったが、特に康二は何も言わずに黙っていた。

消毒が終わって絆創膏を貼り終え、ようやく康二を横にすることができた。
残念ながら冷えピタは無いので、冷やしたタオルでも持ってこようとその場を離れようとすると、くいっと服を引っ張られた。


「どうした?」
向「…だて」
「うん、なに?気持ち悪い?」
向「……、たい」
「ん?」
向「…ぃ、たいぃ」
「痛い?…あ、傷?」


しみて、いたい。
しょうどく、いややぁ。


…いや、反応速度目黒蓮か?
さすがに時差がありすぎて、目の前の康二は目をうるうるさせながら訴えてきているのにも関わらず笑ってしまう。

そんな俺を見て腹が立ったのか、「もういい、だてなんかしらん」と言ってそっぽを向く康二。
ごめん、康二があまりにも面白くて。というか熱出したらこんな風になるんだな。意外だ。

すっかり拗ねてしまった彼の後頭部を撫でていると、ノックの音が聞こえてくる。
ラウールが様子を見に来たんだろうと声をかけると静かに入ってきた。


ラ「康二くん、どう?」
「測ってないからわかんないけど、たぶんそれなりに高いと思うよ。というか、そのタオル…」
ラ「あ、うん!タオル冷やして持って来た!」
「ありがとう、ちょうど持ってこようかなって思ってたんだ」


用意してくれたタオルを使おうと康二に声をかけると、ゆっくりと振り向いた。
まだ目は潤んでいて、たぶんラウールにもそれは見えている。


ラ「え、康二くん泣いたの?」
向「…ないてへんもん」
ラ「泣いたじゃん絶対!」


えぇウケる、かわいーね康二くん。
らう、うるさい。
はいはい、康二は寝てください。



ちょっと借りるね。/黒→←*



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同期ゆり組担 - さんかっけいさん、ありがとうございました。とてもおもしろかったです!投稿、お疲れ様でした。 (2023年3月21日 20時) (レス) id: ecb79bbb8a (このIDを非表示/違反報告)
さんかっけい(プロフ) - 同期ゆり組担さん» リクエストありがとうございます。書かせていただきました!若干内容の差異はあるかと思いますが、ご満足いただけると幸いです! (2023年3月21日 16時) (レス) id: 354f0ed835 (このIDを非表示/違反報告)
同期ゆり組担 - またもや、リクエストよろしいでしょうか? あべちゃんが5人のお兄ちゃん達にわがままを言いまくって困らせてかまってもらう、というお話が見たいです。細かい設定はお任せします!よろしくお願いします! (2023年3月6日 23時) (レス) id: 67b27e02af (このIDを非表示/違反報告)
さんかっけい(プロフ) - 同期ゆり組担さん» こちらこそありがとうございました! (2023年2月23日 12時) (レス) id: 354f0ed835 (このIDを非表示/違反報告)
さんかっけい(プロフ) - Mさん» ご感想ありがとうございます(^^♪ 励みになります! (2023年2月23日 12時) (レス) id: 354f0ed835 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さんかっけい | 作成日時:2023年1月28日 3時

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