『九人確かにここに、いるんです。』

ふわり、ぽかぽか。／緑 ページ39

この1年、ありがたいことに色々な番組に呼んでいただいて、めめほどではないけれどそれなりに多忙な日々を送っていた。
それまでゲストとして何回か出演していたクイズ番組にはレギュラーとして参加できるようになったり、先輩のドラマに出演したり、情報番組の1コーナーを任されたり、天気予報もちょろっとやってみたり。

この間YouTubeの撮影で翔太に「疲れてないか？」なんて聞かれて、その時は「疲れてないよ」と発言したものの、俺だって普通の人間だから全然疲れてないと言えば嘘になる。
ただそれよりも、たくさん舞い込んでくるお仕事たちがすべてSnow Manのためになるなら、という気持ちのほうが強くて、半分気合いで乗り切っているようなものだ。

今日は朝から個人での雑誌の撮影とインタビューが入っていて、その後は冠番組の収録が2本入っている。
昨日も夜遅くに家に着き、なんとかご飯を食べること以外のことはやって、たぶん眠りについたのは午前2時とかそのくらいだった気がする。

おかげで今日も寝不足が酷い。隈はまだメイクで隠せるくらいの薄さを保っているが、俺は忙しいとご飯を疎かにしがちなので、そのせいなのか少し顔色が悪くなっていた。
これ絶対ふっかとかめめとか翔太に色々言われるやつだ。親戚のおじさんみたいに「もっと食え」って言われて弁当とかお菓子とか渡されるやつだ(※経験済)。

その光景を想像してしまったせいか、途端に胃のあたりがきりきりと痛んだ。
洗面台に手をつき、右手で胸をさすりながら呼吸を繰り返す。


「…った…、ふぅ…」


…実は、こうなるのは今日が初めてではない。
1週間ほど前からこの胃痛は続いているのだが、こうしてさすりながら深呼吸をすれば数分後には落ち着くため、なんとか我慢をして耐えている。

病院に行くか休むかしないといけないことはわかっているけれど、年末も近いしさすが師走と言われるだけある、今月は仕事が詰まりに詰まっていて、病院に行く暇もなければ休むなんてこともできない。
市販薬を飲んではいるものの、ご飯を抜いているためあまり効いている様子もなく、痛みはずるずると続いていた。

なんとか痛みは治まり、時計を見るとマネージャーのお迎えが来る時間が迫っていた。
俺は冷蔵庫を開け、並んで鎮座している栄養ドリンクを1本手に取りそのまま飲み干す。

なんとなくさっきの痛みが戻ってきたような感覚がしたが、無視をして家を出た。

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