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岩本side
ずしゃん、と後ろから音がした。
「深澤さん!!!!」
前を歩いていたカメラマンさんと数人のスタッフさんたちが声をあげた。
後ろを振り返ると、そこには誰も立っていなくて。
あれ、ふっか、俺と康二の後ろ歩いてたよな?なのにどこに行ったんだあいつ。
…というか、さっきの音、なんだ。
向「…ふっかさ、?……ふっかさん!!!ふっかさん、っ!!」
隣にいる康二がひたすらに声をあげる。俺はそれを聞きながらその場に立ちっぱなしで、まったく頭が働こうとしなくて、今何が起きているのか考えられない。
そんな俺には見向きもせず、スタッフさんたちと康二は忙しなく動いていた。カメラマンさんは持っていたカメラをそのまま地面に置いていた。
「ちょ、ここ結構な高さだけど、」
「私プロデューサーのところ行ってきます!!」
「よろしく!ロケ中止にして!」
向「ふ、ふっかさ、捜さな…っ!」
「向井さんダメです1人で捜しに行こうとしないで!!」
「岩本さん、岩本さん?大丈夫ですか岩本さん!」
スタッフさんの1人に声をかけられ、呆然としていた頭が急に動き出した。
さっきのずしゃん、という音は、ふっかが足を滑らせて落ちた音で、だからふっかの姿が見当たらない。山の下のほうに落ちてしまった、から。
彼が落ちてしまったであろう場所の近くへ歩いて行き、下を見下ろしてみる。
周りから「危ないから離れて!」などと言われているが、それらは俺の耳に一切入ってこなかった。
曇り空のせいなのか視界が悪くて、一番下まで見えない。もちろんふっかのあの紫色のつなぎも見えなくて、途端に血の気が引いて焦りが出てくる。
しかし後ろから聞こえてくる康二の泣き叫ぶ声が響いて、俺が焦っている場合ではないことに気づいた。
向「離せ、!!ふっかさん見つけなあかんのになんで止めんねん!!!離せ、よっ!!」
「だから1人じゃダメですって!!」
岩「……康二」
向「、てるに、照兄、一緒捜し行こ?な?」
岩「…ダメだ、1回みんな集まろう」
向「〜っ!?なんで、」
岩「お前も同じようなことになったらどうするんだよ」
向「そ、れは、…」
岩「…大丈夫、ふっかなら大丈夫だから。な?」
そう言うと、康二は涙を流しながらも少しだけ落ち着いてくれた。
大丈夫だ。ふっかはこんなところでいなくなるような奴じゃない。
そうして自分にも言い聞かせているとぱらぱらと雨が降り始め、自分たちを濡らしていった。
…今降るのかよ、雨。
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香さん - しょっぴーのだてさんの呼び方を良太にするともっといいと思います (12月2日 20時) (レス) @page22 id: 5b7efd0466 (このIDを非表示/違反報告)
さんかっけい(プロフ) - みりぃ(緑璃)さん» ご感想ありがとうございます…!励みになります(_ _)今後も精進して参りますのでよろしくお願いいたします! (2022年12月22日 20時) (レス) id: 354f0ed835 (このIDを非表示/違反報告)
みりぃ(緑璃)(プロフ) - テンポのいい文章が読んでてとても心地良いです。これからも更新を楽しみにしてます (2022年12月22日 17時) (レス) @page44 id: e9c37a05cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さんかっけい | 作成日時:2022年12月4日 2時