＊ ページ31
阿部ちゃんは握っていた手を離されたのが嫌だったのか、毛布から手を出してしょっぴーの手を探すような仕草をしていた。
しょっぴーがそれに気づいて素早く手を握ってやると、阿部ちゃんは安心したのか潤んだ目をそのまま閉じて眠りについた。
今まで見たことがない彼の姿を見て動揺している俺の肩を叩いたのは佐久間くん。
彼のほうを向くと、眉を下げてどこか申し訳なさそうな顔をしていた。
佐「…ちょっとびっくりしたでしょ、ごめんね」
「あ、いや、大丈夫だけど。いや、びっくりはしてる」
佐「あべちゃんねー、我慢して無理して最終的に爆発しちゃうとね、ああなっちゃうんだよねえ」
「…ああなる、って」
佐「熱出して不安になっちゃうんだろうねえ、甘えたさんになるのよ」
そう言う佐久間くんの顔は「しょうがないな」とでも言っているような、お兄さんみたいな表情をしていて。
俺が入る前にも同じようなことが何回かあったのだろう。ふっかさんとしょっぴーのほうを見ても、佐久間くんと同じ表情をしていた。
深「今回はなべが生贄だな」
渡「しゃがみの体勢つらいから座りてえんだけど床冷てえんだよな…ふっか椅子持ってきて」
深「はいはい」
ふっかさんが持って行った椅子に座ろうとしょっぴーが動くと、その少しの動きでさえも感じ取って眉間に皺を寄せる阿部ちゃん。
それに気づいたのか、しょっぴーは空いている手で優しくゆっくりと頭を撫でる。その温もりを感じているのか、阿部ちゃんの眉間の皺はだんだん無くなっていった。
ふっかさんと佐久間くんが今日の撮影について話をしている間、俺は阿部ちゃんのそばに静かに歩いていった。
毛布やブランケットで半分ほど隠されている顔はいつもより少し赤くなっていて、誰がどこから見ても熱を出しているのは容易にわかる。
上がりきったのかきっていないのかはわからないけれど、どっちにしろつらいのには変わりない。
俺は無意識に阿部ちゃんの頭に手を伸ばしていて、気づいたらふわふわの髪の毛が手のひらに当たっていた。
渡「…年下に撫でられる年上の図」
「ふはっ(笑)」
阿「ぅぅん……、ん、…？……しょ、…たぁ…？」
ぼそっと聞こえたしょっぴーの一言に笑ってしまい、その笑い声が結構大きかったのか阿部ちゃんが起きてしまった。
やべ、と撫でていた手を引っ込めると、阿部ちゃんは熱のせいで少し虚ろな目を動かして、そのまま俺と目が合った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 683人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
香さん - しょっぴーのだてさんの呼び方を良太にするともっといいと思います (12月2日 20時) (
レス) @page22 id: 5b7efd0466 (このIDを非表示/違反報告)
さんかっけい(プロフ) - みりぃ（緑璃）さん» ご感想ありがとうございます…！励みになります(_ _)今後も精進して参りますのでよろしくお願いいたします！ (2022年12月22日 20時) (レス) id: 354f0ed835 (このIDを非表示/違反報告)
みりぃ（緑璃）(プロフ) - テンポのいい文章が読んでてとても心地良いです。これからも更新を楽しみにしてます (2022年12月22日 17時) (レス) @page44 id: e9c37a05cd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さんかっけい | 作成日時：2022年12月4日 2時
