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佐久間とめめを連れて歩き回っていると、前から背の高い末っ子が走ってきているのが見えた。
そういえば打ち合わせの前に雑誌の撮影があるって言ってたっけ。遅れると思って走ってんのかな。
そう呑気に思っていたが、彼が近づくにつれてそんな理由で走っていないのではと気づく。
背の高い彼…ラウールのその表情は、どこか切羽詰まっており緊迫した雰囲気を纏っていた。
「ラウ、どうした!」
ラ「ふっかさ、!たすけ…!」
目「落ち着けラウール、なんかあった?」
ラ「あの、あっち、の…っ階段の近くの、奥のトイレ、」
「トイレ?」
佐「なに、幽霊にでも会った?(笑)」
佐久間はそう言って和やかな雰囲気にしてくれようとしたが、それでもラウールは表情を固めたまま変えずにこちらを見ていた。
それで伝わったのか、佐久間も俺たちも眉をひそめてラウールの次の言葉を待った。
ラ「トイレで康二くんが」
「っ康二?康二がいたの?」
ラ「でも、ずっと何やってんのかわかんなくて、なんか、声かけても聞こえてないみたいで…っ」
目「どういうこと?」
佐「…とりあえずそのトイレ行こう、康二がいるんだから」
ラ「あ、今しょっぴーがそばにいてくれてる、んだけど…俺たちじゃどうしようもできないから、誰か呼んできてって言われて」
「そっか。ありがとうラウ。…行くぞ」
ラウールが来た道を走って進み、階段横にあるトイレへと向かう。
ここの会議室がある階は何度も使ったことがあるが、用を足す時は会議室近くのトイレを使うことが多く、階段の奥のほうにもあることは知らなかった。
危ない、ラウールがいなかったら康二を見つけられずに終わってしまうところだった。
前を先導して走るラウールに心の中でもう一度お礼を言い、彼に着いていく。
走って着いた先は電気は点いているものの少し薄暗くて、まるで今の康二を表しているみたいで心が痛くなる。
康二のそばにいるというなべの声が廊下にいても聞こえてくる。その声は焦りを含んでいて、一体中で何が起きているのか、こちらも焦ってくる。
ラ「康二くん!しょっぴー!」
渡「ラウ、!…ふっかたち呼んでくれたのか」
目「しょっぴー、康二…は……、康二?」
ばしゃばしゃ。
ごしごし。
そんな擬音語がぴったりなその光景は、異質だった。
なべの隣には、手洗い場でただひたすらに手を洗う康二の姿。
一体どれくらいの時間洗っているのか、彼の手は擦れ過ぎて赤くなっているのが見えた。
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香さん - しょっぴーのだてさんの呼び方を良太にするともっといいと思います (12月2日 20時) (レス) @page22 id: 5b7efd0466 (このIDを非表示/違反報告)
さんかっけい(プロフ) - みりぃ(緑璃)さん» ご感想ありがとうございます…!励みになります(_ _)今後も精進して参りますのでよろしくお願いいたします! (2022年12月22日 20時) (レス) id: 354f0ed835 (このIDを非表示/違反報告)
みりぃ(緑璃)(プロフ) - テンポのいい文章が読んでてとても心地良いです。これからも更新を楽しみにしてます (2022年12月22日 17時) (レス) @page44 id: e9c37a05cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さんかっけい | 作成日時:2022年12月4日 2時