絶対に振り向かしてやる【菅原編】 (ページ17)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:14,670 hit

S17 ページ17

しばらくの間、ずっと抱き合ったままだった。

それから俺の胸にAを凭れさせているうちに、すやすやと穏やかに寝息を立ててしまって

無防備な寝顔を見ると、安心で自然と笑みが零れてしまう。

少しは気が楽になったのかな…

部屋まで運んでやりたいけど、流石に、こんな夜に女子の部屋忍び込むのはよくねーよな。

どうするか…そう考えた末に辿り着き、頼るしかなかったのは清水、たった1人だった。

物は試し、思い立ったなら行動しよう。

彼女を起こさぬようポケットのスマホに手を伸ばし静かに取り出すと、清水宛てにメッセージを打った。

『遅くにごめん、起きてる？』

そう送って返事を待ったけど、一向に返ってこない様子から、彼女は既に寝ているんだと察する。

やっぱ俺が行くしかないかぁ

騒ぎにならないといいな、なんて大袈裟なことを考えた。

Aを抱き上げてゆっくりと歩き出す。

月明かりに照らされただけの廊下は、薄暗くてよく見えない。

「っ、…う…」

「…A？」

小さく声を漏らしたAを呼んでも返事はなかった。まだ眠っているらしい。

「すがさん………」

「！」

微かに動いた口から出た俺の名前。

気のせいなのかどうなのかわからない。
眉を八の字にして、少し辛そうな顔をしてるように見えたんだ

「ごめ、んなさっ…」

ほろりと一粒の雫が、光を反射して零れたのが見えた。

切ない声が、痛いほどに胸を締め上げて。