絶対に振り向かしてやる【菅原編】 (ページ14)

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S14 夢主side ページ14

ずっとモヤモヤしたまま、1日が終わってしまった。

消灯時間の過ぎた夜、冴え冴えとした私の意識と目は、どうしても眠ろうとしてくれなくて

だから、考えてしまう。

ふと見せる蛍の柔らかい笑顔が、何度も脳裏を掠めるのを、私は耐えていられなかった。

合宿前、蛍の靴がなかった昨日。私は菅さんと帰った。

昨日から、二人の間に帳が落ちたのを察した。

ちょっとしたことでも、蛍と面と向かって話した時間は、今まで一度もない。

だけどそんなことこれまでにもあったはずで、普段通りで間違いないはずなんだ

それで次の日には普通に挨拶して普通に話す。そうして解決。その時と、同じ。

…でも全然違う

違うってことはわかっても、どう違うのか、全然わかんない

蛍が、わかんない

「…」

重い体を起こしのろのろと布団から這い出る。

気が付くと体は部屋を出ていて、月明かりの指す、誰もいないロビーへと動いた。

肌を刺すような冷たい空気が漂うその場所は、今の私の心情にはぴったりだった。

ロビーのソファは、先程まで誰かが座っていたような温もりが残っていた。

膝を抱え込んで身を縮めても、凍えそうな温度は変わらなくて、その上一人で寂しくて

部屋を抜けてきた自分はもしかして馬鹿なんじゃないかなんて、今更思った程だった。

「寒いや…」

そう吐いた息は白い蒸気になって空(くう)に溶けた。

部屋に戻りたい。でも、戻りたくない

「A…？」

きっと、幻聴か何かだった

今一番会いたくない人の声がした。