絶対に振り向かしてやる【菅原編】 (ページ12)

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S12 ページ12

雑音ひとつないこの空間。
彼女の消えそうな声は、しっかりと俺の耳に届いた。

敬語の抜けたその一言が、痛いほど胸に刺さって、涙が溢れてしまいそうな感覚だった。

「＿＿＿＿＿っ」

「菅さんの恋人になりたいって…それが私の答えです」

「だけど」と少し泣きそうな声で話し続ける彼女を、俺は真っ直ぐ見つめる。

「ちゃんと付き合う前に、きちんと話したい人がいるんです、あの…それが終わるまで、待ってもらえますか…？」

〝話したい人〟

多分それは、今俺が考えつく奴で間違いないんだと思う。

答えはイエス

言うならまぁ、それはそれは喜ばしい気分で、今にも泣き出しそうなほどだったと思うんだ

けれど彼女の深刻なその顔は、どうしても俺を舞い上がらせようとしない

ただ単純に、そんな顔をさせてしまうアイツが

ちょっと恨めしくて、羨ましかったりするんだ

「…ん、わかった」

申し訳なさそうな顔の、無理矢理な笑顔が俺の胸をきつく締めた。

そんなAをなんとかしたくて

「な、そんな顔すんなー？」

両手で彼女の頬を挟んでぐりぐりしてやった。

「んん、んふふ」

Aは嫌がるわけでもなく、されるがままで、
眉を八の字に垂れさせてやっと笑顔を見せてくれた彼女に、俺は少しほっとした。

「大丈夫だべ」

手を離しそう声をかけると、Aはまた少し目を潤おして、柔らかい笑顔で頷いた