おとなりさんのうらたぬきさん。【歌い手】 (ページ3)

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おとなりさんその1 ページ3

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「急いで帰らないとな…」

　
仕事帰りに、携帯を見れば懐かしい人からの連絡があった。
その相手は、専門学校の同級生だったわたるくん
…声優の浦田わたるであり、歌い手のうらたぬきだ。

　
「それにしても、わたるくんと会うの久しぶりだな…１年ぶりくらい？」

　
私も声優だから、同業者なのだが私が主に活動しているのはゲームやアプリのキャラクター。
わたるくんとはアニメでしか一緒になることがなく、歌い手としても活動している彼とは
あまり会わない…学生時代はほぼ毎日一緒だったから最初のうちは違和感しかなかった。

　
「にしても、これから隣になるのか…」

　
わたるくんから送られてきたのは、私が住んでいるマンションの名前と部屋番号。
そして、俺隣の内覧来てる。というメッセージだった。
確かに最近お隣さん引っ越したけど、もう人を入れれる状態なんだ…と思いながら
そうだよ、と返信したら内覧終わったから下にいる、会える？とのこと。

　

「ノリが学生時代のままだよ…？」

　
そう思いながらも、私も帰宅のスピードを速めた。
学生時代はよく互いの家に遊びに行ったり、一緒に声劇したり…
歌ってみたを始めたわたるくんの曲をMIXしたりしてたなぁ…
こんな時、だいたい互いのスケジュールなんて気にしないで下にいるとかよくあったよなぁ。
……学生時代、１０年くらい前なんだけどさ。

　
「…あ、あれかな？」

　
最寄駅から家までの道を速足で歩き、マンションが見えてきた。
そこの花壇の前に、うっすらと見える金髪は…おそらくわたるくんだろう。
向こうもなんとなくで私を認識したのか、こっちに向かってきてくれた。

　
「よー、A。久しぶり、元気だった？」

「元気だよー、わたるくんも元気そうだね。」

「まぁな。突然悪い、大丈夫だった？」

「うん、ちょうど仕事終わったところ。ここじゃアレだし、家来る？」

「じゃあそうする。」

　
見た目はずいぶん変わったけど、中身は今までと変わらないわたるくんだ。
お互いの近況を離しながら、家に向かうけど…私洗濯物干したままじゃないかな？
それはいろいろとマズくな…いや、マズい…よね？

　
「…わたるくん、ごめんちょっと待って。」

「え？」

「ちょっと洗濯物取り込んでくる。」

「ん、りょーかい。」

　
部屋の前で、彼を待たせて家に入る。
案の定、室内には朝干していった洗濯物があったので、取り込むのは後にして自室に投げた。

　
「これでよし…っ」