おとなりさんのうらたぬきさん。【歌い手】 (ページ2)

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おとなりさん0日目ページ2

＊うらたぬきSIDE＊

　
「こちらになります。」

「へぇ、外観おしゃれですね。」

「そうですね、築年数も浅いですし。おすすめのマンションです。」

　
10月、久しぶりの休日、俺は不動産屋に来ていた。
そろそろ引っ越そうと、ネットでいくつか部屋をチェックして…内覧に来ている。
希望しているこのマンションは、駅からも近く、コンビニも近い。
そして何より楽器可能…つまりある程度の防音がされているということだ。
　
　
「このように、玄関はオートロックとなっております。」

「なるほど…」

「お部屋は６階になります、どうぞ。」

　
店員に言われるまま、６階に上がる。
俺が希望していた部屋は角部屋になっている。
ふと、隣りの表札が目に入って…息をのんだ。

　
「…え、マジ？」

「お客様？どうかされました？」

「い、いや、何でもないです。」

　
一瞬思考が固まり、店員さんの声で我に返る。
他人の空似かとも思ったが、あの苗字はとても珍しいと本人が言っていた…
この部屋の隣の表札に合った文字は『神取』…俺の、片想い相手と同じである。

　
「連絡入れとくか…」

「では、中に入りましょうか。」

「あ、はい。」

　
久しぶりに彼女に連絡を入れて、そのまま中に入る。
玄関入って、すぐにトイレ、左側には浴室と洗面台があった。
トイレの奥には、小さめの洋室…ここはアレだ、配信部屋にできそうだ。
そして、リビングに入ってすぐ右手には、俺にはもったいないほど豪華なキッチンが。

　
「すごいっすね……」

「そうですね。大変人気と物件となっております。」

「ですよね…」

　
キッチンの目の前には、もう１つの洋室がありここが寝室になりそうだ。
正直ココでいい。というか、ココがいい…隣がアイツじゃなくても。
ふと、携帯を見れば返事が返ってきて、そこにはそうだよと言う言葉が。
それを見るや否や、俺の意思は完全に決まったのだった。

　
「すみません、ココに決めます。」

「かしこまりました。それではお店に戻って契約の手続きを…」

「それなんですけど…明日とかでも大丈夫ですかね？」

「構いません、こちらの書類の準備もありますので…それでは明日、こちらに記載されている
　書類を用意してまたご来店いただきますでしょうか？」

「分かりました。ありがとうございます。」

　
それから、一言二言かわして外に出る。
帰りは歩いて帰る旨を伝え、玄関で別れてそのまま待つことにした。

　
「久々だな…会うの。」

　