オトナリサン。 2nd (ページ10)

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【56】2人を繋ぐ唯一の線。ページ10

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「確かにアナタのことを芸能人だと見ているのは確かですけど、」

「･･････」

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雑誌編集者として、これまでいくつもの記事を書いてきたのに、こういう時に気の利く言葉の一つもサラッと出てこない。

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「上手く言えないけど私は─────」

「･･････あのさ、」

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背を向けたままの二宮和也が低い声で、私の話を途中でぶった斬る。

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そして今まで背を向けてた二宮和也がクルッと私の方を向く。

でもその姿はさっきの声色とは裏腹に、満面の笑み。

･･････何だかそのギャップに怖気付く。

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「やめよっか。」

「え？」

「やめよ、もう。」

「え、何を、」

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話の見えない私に、怖いほど笑顔を浮かべたオトナリサンがコチラに一歩近付く。

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「─────･･････共犯同盟。」

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私と、二宮和也を、唯一繋いでいた一本の線。

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それを？･･････やめる？

あれ？私ってバカだっけ？って思うほど、言葉の咀嚼が上手くいかない。

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「俺もすっかり忘れてたけど、もともと1ヶ月間限定の監視だけだったしさ？」

「･･････」

「気付いたらもう1ヶ月経つし？」

「･･････」

「俺の監視のせいで良いオトコ逃したって言われても嫌だし？」

「･･････」

「ま、俺以上の良いオトコなんて居ないだろうけど(笑)」

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言葉がただひたすら耳に流れてくるだけで、最後の冗談すら脳の理解が追い付かない。

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「喜ばしいこと、なんだよね･･････？」

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自分に言い聞かせるように声を絞り出した。

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「当たり前でしょ(笑)俺のパシリとかお世話係も、もうおしまい。」

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短かったようで長かった1ヶ月。

長かったようで短かった1ヶ月。

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「もうおしまいなんですね。」

「うん。」

「･･････あー。何か、せいせいした(笑)」

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感情のバロメーターがぶっ壊れたのか、心とは裏腹に笑いが込み上げてきた。

それを二宮和也は、嬉しさから込み上げる笑顔なんだと勘違いしてそう。

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「てことで─────･･････今日から共犯はクビだね。」

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いつかの似たような言葉がフラッシュバックして、オトナリサンが自宅に入った後もなお、

私は1人、廊下にしばらく佇んでいた。

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